本連載では、学校への取材経験が豊富な教育ライターの佐藤智さんが、現役の先生たちに保護者が気になることを聞いていきます。連載第10回のテーマは「小学校での教科担任制」について。2019年に文部科学省から示され、22年から実施することとされていましたが、先んじて導入していた自治体や小学校も多いようです。保護者の中には、中学や高校時代に経験した教科担任制をイメージし、子どもに聞いてみたものの、想像と違っていたという方もいるのでは。そこで今回は、小学校現場でどう教科担任制が実施されているのかについて話を聞きました。

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これまでのラインアップ

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【話を聞いた先生】
A先生 神奈川県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり11年目。
B先生 都内の公立小学校に勤務。新卒で先生になり20年目。
C先生 栃木県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり9年目

中・高の教科担任制とは異なる小学校現場

 小学校ではこれまで学級担任制が取られてきており、担任教員がひとりでほとんどの教科・科目を受け持つ仕組みとなっていた。しかし、近年、小学校で教科担任制の導入が進められている。教科担任制とは、特定の教員が決まった教科・科目を担当し、複数の学級を受け持つ制度のことだ。中学校や高校で受けてきた授業をイメージすると分かりやすいだろう。

 小学校での教科担任制はどのように導入されているのだろうか。神奈川県の小学校に勤務するA先生はこう語る。

 「中学校の場合は、英語の先生ならば英語だけ、体育の先生ならば体育だけを教えます。しかし、私の勤務する小学校ではそのような運用とはなっていません。現状は各学年の先生同士でやりくりしながら、教科担任にしやすい教科・科目だけを実施しています」

 「教科担任にしやすい教科・科目」とはどういったものなのか。A先生は続ける。

 「例えば、1学年3クラスとした場合、全クラス分の理科をX先生、社会をY先生、体育をZ先生といったように分担するのです。文科省から教員の増員も発表されていますが、現段階では新たな先生が来るのではなく、現在学年に在籍している教員間でやりくりする体制が取られています。他の授業はこれまで通り学級担任が担うので、時間割のパズルに頭を悩ませています。この方法だと、週3コマのやりくりが限界で、国語や算数などコマ数が多いものはこれまで通り担任の教員が受け持つ状況が続いています」

 こういった教科担任制で、先生たちの負担感は減少したのだろうか。東京都で20年間小学校現場に立つB先生はこう言う。

 「これまではすべての授業への対応が必要でしたが、特定の教科・科目に絞ることで負担感は多少軽減しました。学校としても複数の教員の目でひとりの子どもを見守れるメリットがあるでしょう。ただ、もっとやりようはあるのではないか……と思うこともあります」