本連載では、学校への取材経験が豊富な教育ライターの佐藤智さんが、保護者が気になることを現役の先生たちに聞いていきます。連載第9回のテーマは「先生の多忙化と働き方」について。最近では先生方の忙しさが取り沙汰されることが多く、「こんなことを言うと、仕事を増やしてしまうのでは」と遠慮してしまうという保護者の声も耳にします。そこで今回は、先生たちはどのようなことで多忙なのか、業務改善の進捗はどうなのかを赤裸々に話してもらいました。保護者会では出てこない先生のホンネや小学校のリアルな事情を聞いていきます。

【親が知りたいことを直撃! 先生のホンネ 学校のリアル】
これまでのラインアップ

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【話を聞いた先生】
A先生 神奈川県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり11年目。
B先生 都内の公立小学校に勤務。新卒で先生になり5年目。
C先生 千葉県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり27年目。

圧倒的に人手が足りない学校現場

 さまざまな報道で「教員の多忙化」を耳にするが、学校の外側にいると「どのような状況が起きているのか」は見えにくいもの。そこで、神奈川県の公立小学校に勤務するA先生に、なぜ多忙化が解決しないのか、率直に聞いてみた。

 「一言で言うと、人手が足りないのです。担任も音楽や図工などの専科教員も人手が十分ではありません。例えば、私が産休に入るときは直前まで次の担任になる産休代替教員が見つかりませんでした。代替教員は、教育委員会から紹介されると思っている方もいるかもしれませんが、そのようなことはほとんどなく、各学校がツテを頼りに探し、交渉するのです。管理職の先生は『誰か知り合いはいないか?』とよく周りの先生に聞いて回っています」

 復帰後は申請すれば時短勤務が可能になる。時短勤務だと午後の授業を受け持つことが難しいため、担任は任されないことが多い。1つの学校で2人の時短勤務者が出れば人員が補充されるが、1人では補充がない自治体もある。「人手のやりくりが大変になることは分かりきっているので、私は時短勤務の申請はしませんでした」とA先生は続ける。

 せめて、教員が抱える事務作業を他のスタッフに任せる体制は取れないのだろうか。都内の公立小学校に勤務するB先生はこう続ける。

 「自治体や学校規模によって違いはあると思いますが、私の勤務校にはアシスタント職員という方がいて、教員のサポートをしてくれることになっています。ただ、会社組織でも同様かもしれませんが、どのくらい仕事をお願いできるかどうかはその人の人柄によるところが大きくて……。以前、私の学校にいた方は『きょうの午後に使うプリントを印刷しておいてください』と頼むと、『依頼は1週間前までにしてください』と言っていました。1週間あれば、自分でできます(笑)。ただ、現在勤務している方は機転を利かして対応してくれていますよ」