本連載では、学校への取材経験が豊富な教育ライターの佐藤智さんが、現役の先生たちに保護者が気になることを聞いていきます。連載第8回のテーマは「クラスの荒れ」について。「コロナ下が続き、久しぶりに授業参観に行ったらクラスが荒れていた…」といった保護者の声も耳にします。先生たちは、子どもたちの荒れをどう察知し、学級崩壊に至らないようにしているのでしょう。親にできることについても気になります。保護者会では出てこない先生のホンネや小学校のリアルな事情を聞いていきます。

【親が知りたいことを直撃! 先生のホンネ 学校のリアル】
これまでのラインアップ

いじめた側を出席停止にしないのはなぜ? 先生の本音は
探究学習は調べ学習と違う? 適当にやる子ヘの指導法
通知表はどのようにつけている? カギは3つの「観点」
新しい担任に不安が 前の担任に相談していい?
積み上げ教科の算数と国語 つまずいたときの対策は?
学校のデジタル化 意外な効果や先生の戸惑いとは
コロナ下で子どもの笑顔減ったことも先生の心の負担に

【話を聞いた先生】
A先生 神奈川県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり15年目。
B先生 千葉県の公立小学校に勤務。新卒で先生になり7年目。
C先生 都内の公立小学校に勤務。新卒で先生になり13年目。

子どもたちは環境から大きな影響を受けている

 コロナ下により学校行事を見学する機会が減ったり、保護者会がオンライン化したりと、保護者が子どものクラスに触れる頻度が減少している。様子が分からない中で心配なのが、クラスが荒れたり、いじめが起きたりしていないかということだ。

 その点については、先生たちも神経を研ぎ澄ませている。今回話を聞いた3人の先生が共通して言うのは、「クラスは一度崩壊してしまったらそう簡単には戻らない。荒れないようにいかに事前策を講じられるかが大事」ということだ。

 先生たちはクラスの黄色信号をどう読み取っているのだろう。教員になって15年目のA先生はこう言う。

 「教員は子どもたちの様子をよく観察しています。クラスに不穏な空気を感じるのは、廊下や教室の床にゴミが落ちているのにそのままになっていたり、休み時間や放課後に机の上が片付けられていない子が増えたりといった様子が見られたときです。こういったときは、子どもたちに注意をして、片付けさせます。

 萎縮させるのはいけませんが、勉強をするために教室は適度な緊張感がある場でなければいけません。子どもは環境から大きな影響を受けているので、まずは教室の整備を重点的に行い、その重要性を子どもたちにも伝えていきます」

 教員になって7年目のB先生もA先生の話にうなずく。

 「大したことがないように感じるかもしれませんが、教室の環境は非常に重要です。私は掲示物をそろえて張ったり、古い掲示物がずっと残っていたりしないようにしています。子どもの作品を張り出すことはその子の頑張りを認める意味もありますが、ずっと同じ掲示物ではその効果は薄れてしまいます。子どもたちに『きれいにしなさい』と指示するだけでなく、教員が環境に細かな配慮をしながら学級経営をすることも大事だと感じています」

 「掃除をサボる子が出てくる」ことも、要注意事項として挙がった。この場合、先生たちはどう対応しているのだろう。教員になって13年目のC先生は子どもへの接し方についてこう説明する。

 「掃除は、できていない子を叱るのではなく、きちんとやっている子を褒めて認める対応をします。小学生の場合、気を引きたかったり大人を試したりするためにあえてルールに反する行動をすることがあります。そうした問題行動に注目すれば、子どもの要求に応えたことになり、注意を引きたいときにまた同じ行動を取るケースもあるからです」

 状況によっては、問題行動を重ねる子どもに対応することが必要になる。その際には、クラスメートの前で叱るのではなく、面談などを設けて個別に話を聞くようにしているという。