古荘:そうです。子どもにはどう見えていて、どう聞こえているのかに注意を払うことはとても大切ですね。

小島:その話で思い出しましたが、私が通っていた公立小学校に、写生の時間に空を黄色く塗った同級生がいたんです。教師はそれを叱りました。空は青色なのに、黄色で塗るのはおかしいと。

古荘:その子は本当に青い空を黄色ととらえていた可能性があると思います。強い光を浴びたとき、過敏に反応して痛覚を訴える子どもがいます。そのような場合、脳では光を黄色にとらえるといった現象が起こりえるからです。

―― なるほど、そういった可能性もあるのであれば、「空は青色なんだ」と決めつけて、青色で塗らないことを叱る行為は、ますます許されるものではないと言えそうですね。

小島:私は、子どもが自分の理解の範囲を超えた反応をしたときというのは、その子の個性を知る大きなチャンスだと考えています。教師が「どうして空を黄色に塗ったの?」と尋ねていれば、その児童のことをよく理解できたはずではないかと思います。

 教育の世界では、子どもにどう「入力」するかばかりに目が向けられがちですが、本当に大切なのは、その子が何を「出力」するかに注意を傾けることではないかと感じていまして……。古荘先生、いかがでしょうか。

古荘:おっしゃる通りだと思います。自分が生んだといっても子どもは別々の人間なので、子どもをよく観察し、その子に応じた教育を与えるよう努めることが何より大切ですね。

取材・文/本庄葉子 写真/鈴木愛子 ヘアメイク(小島さん)/中台朱美

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小島慶子
エッセイスト、タレント
東京大学大学院情報学環客員研究員
昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員

小島慶子 1972年オーストラリア生まれ。95年学習院大学卒業後、TBS入社。アナウンサーとしてテレビ、ラジオに出演。99年、第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞受賞。2010年に独立後は各メディア出演、講演、執筆など幅広く活動。14年、オーストラリア・パースに教育移住。連載、著書多数。詳しくはこちら。最新刊は『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP)


古荘純一
小児科医、小児精神科医、医学博士
青山学院大学教育人間科学部教授

古荘純一 1984年昭和大学医学部卒業。日本小児精神神経学会常務理事、日本小児科学会用語委員長、日本発達障害連盟理事、日本知的障害福祉協会専門委員などを務めながら、医療臨床現場では神経発達に問題のある子ども、不適応状態の子どもの診察を行う。『教育虐待・教育ネグレクト』(共著)、『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか』(共に光文社新書)など著書多数。最新刊は『自己肯定感で子どもが伸びる』(ダイヤモンド社)。病的に不器用な子どもの疾患概念である発達性協調運動障害(DCD)のサポートにも積極的に取り組んでおり、自身が大会長を務める第4回日本DCD学会東京大会の市民公開講座(4月26日)では小島慶子さんも登壇を予定