子どもたちの多様な生き方を可能にしたい

 「ダンス」と「教育」に関わる中で、僕は1つの夢を持つようになりました。それは「EXILE UNIVERSITY」という大学を設立することです。

 「ダンスを基軸に、デザインや音楽、学びを組み合わせたらすごい大学ができるんじゃないか」。この構想に最も近いものが、所属事務所のLDHと学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校との連携で4月に誕生する「EXPG高等学院」です。僕の夢に近いものであり、LDHとして新しいチャレンジでもあったので、学長を引き受けることになりました。

「EXPG高等学院」学長就任の記者会見にて
「EXPG高等学院」学長就任の記者会見にて

 なぜこのような高校が必要なのか? と不思議に思う方もいるでしょう。EXPG高等学院の強みは、「学業とダンスの両立」を可能にしたことです。ダンスを学びながら、通信制カリキュラムで高校の卒業資格を取ることができます。

 プロのダンサーを目指す10代の子たちは、青春の時間をすべてダンスに費やします。だからこそ、学校の勉強との両立が難しく、二者択一で悩んだ結果、プロへの道を諦めてしまう子が少なくありません。また、実際にアーティストになれるのは一握りという厳しい現実もあります。「自分はなれない」と思ったときに、ダンスそのものをやめてしまう子もいるのです。僕はそれが寂しいし、もったいないと感じます。プロにならなくても、ダンスは一生続けられるものだと思っているからです。

 ダンスを続けながら高校卒業資格が取れれば、もし、アーティストやバックダンサーになる夢がかなわなかったとしても、大学や専門学校へ進路を広げることができます。また、僕みたいにダンスをやりながらコーヒー店を開く人もいれば、ダンスに適した衣服を作る人、ダンサーのための食事を考える人になってもいい。

 実際に、LDHには元ダンサーの社員や、ダンスとそれ以外のビジネスとを両立している人が多いので、既にいくつものモデルケースがあります。ダンスという入り口に対して、出口が無限に広がっていく。いつか、「踊る弁護士」や「踊る政治家」が登場したら「どんな社会になるんだろう」とワクワクしませんか?

 子どもたちの「好き」を大事にし、ダンスの才能を思い切り伸ばしながら、ダンス以外の選択肢も自然に選べるようにしてあげたい。これからの日本は、人と同じであることよりも、オリジナリティーが求められる時代になるでしょう。ダンサーも「生き方の多様性」を見つけていかなければなりません。それをみんなで考えられる場にしていきたいと思っています。

構成/都田ミツコ 写真/中川容邦
スタイリング/JUMBO ヘアメイク/千絵