子どもの想像力を尊重し、説明は最小限に

 USAさんから聞いたのは、「喋りすぎは相手の想像力をバカにしている」というネイティブアメリカンのことわざです。言葉で説明しすぎてしまうと、道筋が決まってしまい、相手はそれに従うだけになってしまいます。子どもたちに話をするときには、すべてを教えるのではなく、「相手が想像力を働かせる余地を残す」ような話し方を、特に気をつけています。これは、大人に対してビジネスの場で話をするときにも共通します。

 教え過ぎないようにしているもう1つの理由は、教えた通りに動くよう指導したところで、みんなが同じになってしまい、「面白さ」が生まれないからです。「肘はこう、膝の角度はこうだよ」と動きを一つひとつ教えるよりも、説明を最小限にして、実際に僕がお手本を見せてから、「はい、やってみて!」と自由に踊ってもらったほうがいい。すると、お手本と全く違っていても「それ、面白いじゃん!」と驚くような動きが出てくるんです。

 もちろん、ライブのステージに立つなど「仕事」としてダンスに取り組む子に対しては、プロとして振り付けや動きを間違えないように指導します。でも、「教育」の場ではあまり教えすぎないほうが、その子らしく生き生きと伸びていくのではないでしょうか。

 ダンスは「言葉」がない表現なので「嘘」がつけません。失敗したら隠しようがないし、明るい曲なら明るく、バラードなら切なく踊る。本当にストレートなんです。子どもたちが自分に正直に、型にはまらずに何かを表現できるようになることは、成長の過程ですごく大切なことだと思います

 子どもたちとダンスをしていると、彼らの自由な発想がとても勉強になります。音楽が流れると、子どもたちは「動きたい、踊りたい」という衝動に逆らわず、素直に体を動かします。アーティストとして「子どもには勝てないな」と思わされますね。子ども達の持つ感性はそれくらい素晴らしいものなんです。