遊びを通して培った主体性が、将来の自分の命を守る

四釜 3~5歳はまだ、有事の際に自分一人で判断し、決めるのが難しい年齢です。この時期は大人の適切な指示に従うべきだし、大人は全力で子どもを守らなくてはならない、これが大前提です。ただ、成長してからを見越して、3~5歳の時期に親が心掛けたいことはあります。主体性を伸ばすことです。

 例えば、中学生くらいに成長した子どもが一人で買い物をしているとき、大きな地震が起こったとします。全員が一斉に右に逃げる中、思考停止して自分も流れに乗るのではなく、「待てよ、逆に出入り口が混雑する可能性があるかもしれない」と考え、左に逃げようという選択が頭に思い浮かぶかどうか。自分で考えて、選択肢を増やすことができるかどうかは、小さい頃から「自分で考え、決めて、行動した」という経験の量に左右されます。遊びの中で、いろいろ考え、試していく中で培われていくのです。

 私の園で木登りができない子がいました。よじ登ろうとしてもダメで、ぴょんと飛び跳ねても枝をつかめない。でも、諦めずにいろいろ試してみる。小石を積んで登ろうとしてみたり、レンガを積み上げてみたり。その子の中では「こうやったらできるんじゃないか」とぐるぐる思考が続いているんです。

 誰かに指示されて、その通りにするのではなく、自分で考えて行動するという経験を子どもの頃からたくさん積んでおくことが、大きくなってから自分の命を守ることや誰かの命を守ることにつながると思っています。

取材・文/豊田里美 写真/四釜喜愛さん提供

四釜喜愛
社会福祉法人 想伝舎 理事長、「食と森の保育園小松島」園長のほか、仙台市近郊の男性保育士・男性幼稚園教諭の任意の勉強会である「子育伊達塾乳幼児楽会」楽頭や仙台幼児専門学校の非常勤講師等を務める。中学1年生の長男と小学3年生の次男の父。