子どもをパニックにさせてはいけない

四釜 震災のような非日常の出来事の際、子どもたちが最初にするのは「大人の表情を見ること」です。大人よりも知識や経験が少ない子どもたちは、「今の状況をどう判断すべきか」を、大人の表情から読み取るのです。

 実際に私たちの園でも、担任の先生が冷静に対応できたクラスは、訓練通りに動くことができました。一方あれだけの地震だったため、パニックになってしまった先生もいて、その様子を目の当たりにした子どもたちはかなり動揺してしまったようです。

 有事の際に、いかに大人が冷静であるのが大事かを痛感しました。一度子どもがパニックになり、泣き叫ぶような事態になってしまったら、もう大人の言葉なんて耳に入らない。その後の避難にも支障が出ます。震度6だろうと7だろうと、大人は落ち着いて子どもに「大丈夫だから」と伝え続けるのが第一の仕事だと思います。

まずは「子どもと目を合わせる」こと

―― 改めて、震災の日のことを思い出しました。日本中どこでも、地震や水害などの自然災害が起こる可能性があります。もし、子どもと一緒にいるときに何かが起こったとしたら、親としてすべきことは何でしょうか?

四釜 まずやるべきことは、「子どもと目を合わせること」です。目と目が合うことで、子どもに、あなたのことを見ているよ、というメッセージを送ることができる。子どもとしても親から余裕を感じ取って、「大丈夫なんだ」と安心できる。実際は子どもを守らなくちゃ! と大慌てでも、子どもは大人以上に慌ててしまうので、そこは長年生きている者の責務として、冷静になってほしいと思います。

 それから、常日ごろから、「もしものとき」のことを考え、あらゆるパターンを想定し、積極的に訓練をしておくことです。園でももちろん避難訓練はしていましたし、偶然にも震災の数日前にも実施していました。訓練しておくことで、いざというときに体が動くのだと、震災時に実感しました。

 一方で、何度も避難訓練はしていても、「お昼寝中」という状況下での訓練はしたことがなかった。また、実際に地震が起きたときは、マニュアルにあるような「頭を守れる場所」などなく、そもそも歩けるような状況じゃなかったんですね。その経験から、災害が起こったときのあらゆるパターンを考え、既存のマニュアルも見直しました。

 例えば、避難時に大雪だったら、想定していた避難経路は使えないですよね。また、炎天下では、子どもは長時間歩けません。マニュアル通りに、荷物を持って、子どもを安全に誘導できるのか。園舎も見直し、頭を守る場所がない部屋には、収納を削ってスペースを空けて、遊び場を兼ねた避難場所をつくりました。災害が起きるすべてのパターンを想定することはできないかもしれないけれど、あらゆる状況を考え続けることが、リスクを減らすことにつながると思っています。

―― 共働きだと、親子で離れている時間が長くなります。子どもたち自身にも、自分で自分の身を守れるようになってほしいと思っています。子どもたちにどう教えていけばよいでしょうか。