小5の娘と小2の息子を育てる料理研究家の中村陽子さん。理系の教科が苦手だった中村さんは、子どもたちが幼い頃から家で料理を活用した実験をしたり、ワークショップに親子で参加したりして子どもたちが理科に苦手意識を持たないよう取り組んできたそう。そんな中村さんと、開成中学校・高等学校の化学科教諭・宮本一弘さんが、料理や実験で子どもの理系脳の芽を育てるコツについて対談しました。今回の後編では、「家で実験するときに親が気を付けたい点」や「理科が好きではない子へのアプローチ」などについて語っていただきます。

前編 開成教諭×料理研究家対談 「理科好きな子」の育て方
後編 子を「実験嫌い」にしない声かけ 開成教諭×料理研究家 ←今回はココ

実際に家で実験するときのコツ

日経xwoman DUAL(以下、略) 家庭で、親子で実験に取り組むときに、親がどう関わればいいか、少し悩んでしまうことがあります。中村さんが著者で、宮本先生が監修した『理系脳をつくる 食べられる実験図鑑』(主婦の友社)にも、実験でなぜそのような不思議な現象が起きるのかについての化学的な説明が詳しくされていて、親にとってはありがたいです。一方で、こうした、いわば実験の背景にある専門的な知識の解説については、子どもにしたほうがいいのか迷うところです。

開成中学校・高等学校 化学科教諭 宮本一弘さん
開成中学校・高等学校 化学科教諭 宮本一弘さん

中村陽子さん(以下、中村) うちの場合は、特に解説や種明かしはしていないです。

宮本一弘さん(以下、宮本) 解説や種明かしを全部する必要はなく、年齢によっては、むしろやめたほうがいいこともあります。子どもたちに「知識を身に付けさせよう」としても、難しい話を聞かされると子どもは嫌になってしまうかもしれないし、親も嫌になってしまうかなと思います。

 実は学校の授業も同じです。自分が教員になりたての頃は、自分が勉強したことを授業で全部伝えようとしていましたが、熱心に説明すればするほど生徒が嫌になっていくのを感じていました。

中村 全部説明しようとすると、親も疲れますよね。

料理研究家の中村陽子さん
料理研究家の中村陽子さん

宮本 僕が希望を言うとすれば、家庭で理科実験をやるのであれば、親も子どもと一緒になって楽しんでもらいたい。すると、子どもたちはより興味を持ってくれるはずです。

 私は、子どもたちを対象に、実験教室を実施していますが、「今日はうまくいったな」というときと、そうでないときがあります。うまくいかないときというのは、周囲の大人が「この子たち、実験うまくできるかしら」という雰囲気を醸し出したり、あるいは実際に「みんなこれ理解したの?」などと言葉にしたりしたときが多いですね

 できれば、そういう言葉は使わずに、大人の方も「すごいことが起きたね」と子どもと一緒になって楽しんでほしいですね。一緒に楽しんでくれれば、実験の楽しさが子どもにも伝わります。実はこれは学校にも当てはまることで、中学や高校の授業でも、教員がつまらなさそうに話していると生徒は聞きません。夢中になって教員が説明していると生徒も聞きます。

中村 本当にそうですね。親も楽しんでないと子どもにそれが伝わります。親も一緒に楽しむのが大事だと実感しています。

宮本 とはいえ、食べて「おいしい」、やって「楽しかった」と言っておしまいでは、もったいないかなと思います。