コロナ禍を次につながる種まきの時間に

 コロナの感染拡大はさまざまな企業の営業活動に深刻な影響を及ぼしている。営業部門を統括する取締役として、金川さんは今どのようなことを意識しているのだろうか。

 「対面での営業が制限され、これまで大きな会場を借りて行ってきた新商品発表会もできなくなりましたが、代わりに商品紹介の動画を作るなど、新たな挑戦をしています。セイコーというブランドが成長し続けるには、目先の売り上げに一喜一憂せず、種まきをする時間も大切です。営業部門の社員には『今は困難なことが多いけれど、目線を高く上げ、お客様とWin-Winの関係になれるよう前向きに頑張りましょう』と声をかけています」

 時計のビジネスは人の心にどう訴えかけることができるのか、そのために自分たちの会社はどうしていきたいのか。コロナ禍はそれを考え直すチャンスだと、金川さんはとらえているという。

「コロナ禍は、自社の価値を見つめ直すチャンス」と金川さん
「コロナ禍は、自社の価値を見つめ直すチャンス」と金川さん

 同社では、緊急事態宣言が出されている2021年2~3月にかけて、全社で可能な限り在宅勤務を行っている。在宅勤務中には、家族から「本当に仕事が好きなんだね」と言われたという金川さん。仕事の醍醐味について尋ねてみると、「相手も自分も真剣勝負だというところでしょうか」という答えが返ってきた。

 「仕事ですから、場合によっては議論を戦わせたり、怒られたり、謝ったり、いろいろなときがあります。でも、そういう場面を乗り越えて、共通の目的をやり遂げたときの達成感や相手へのリスペクト、感謝といった気持ちは、仕事を続けてきたからこそ得られたものだと思います。この仕事をしていなかったら会えなかったような人々との出会いにも恵まれましたし、仕事で出会えた人は人生の宝物です」