「越境せよ」を人事戦略の基本理念に掲げ、多様な人材の活躍支援に取り組んでいるサッポロホールディングス。2016年から取締役を務めているのが、福原真弓さんだ。二人の子どもを育てながら、ビール業界初の生え抜きの女性取締役となった福原さんに、ダイバーシティ推進のためのこれまでの取り組みや、DUAL世代が責任ある仕事に就くために大切なことについて聞いた。

【前編】2児を育てサッポロ取締役に 仕事で大切にした3つの点
【後編】子育て中の人は自分を「弱者」だと思う必要はない ←今回はココ

一般職から総合職へ。女性のキャリアアップの意欲を後押し

 サッポロビールは2010年を「ダイバーシティ元年」と位置づけ、働き方改革や両立支援制度の導入・拡充を進めてきた。だが、福原さんが人事部長に就任した13年の時点では、「女性に責任ある仕事が任される機会が少なく、能力がありながらも伸び悩んでいる女性社員が多い」ということを課題に感じていたという。

 「当社では、一人ひとりの社員を大切にする風土があり、その中で女性を大切にしようという意識はもともとありました。 ただ、会社が『負荷のかかる仕事を任せることはやめておこう』と過剰な配慮をし、女性社員も『自分には責任のある仕事は無理だろう』と受け入れてしまうケースが多かったのです。いわゆるアンコンシャス・バイアスですね」

サッポロホールディングス取締役 人事、総務、IT担当 福原真弓さん
サッポロホールディングス取締役 人事、総務、IT担当 福原真弓さん

 福原さんが女性活躍推進のために必要な要素として考えたのは、「辞めない」「継続的に成果を出す」「キャリアアップ」の3つだった。「辞めない」という第1段階はクリアできても、責任ある仕事を与えられなければ成果を上げることはできない。それならば、すべての女性社員が責任ある仕事に就いてキャリアアップを目指せるようにしたいと考えた福原さんがまず取り組んだのは、一般職(事務コース)から総合職(総合コース)への職種転換を推進することだった。

 職種転換のための筆記試験を廃止して、職場の推薦があれば面接試験のみとし、女性社員たちの「総合職になりたい」という気持ちを呼び起こすための事前研修を実施。総合職の中にエリアを越えた転勤を伴わないコースも設けるといった取り組みが功を奏し、それまで職種転換する人は年に1~2人程度だったのに対し、16年から19年までの3年間で一般職全体の約65%にあたる96人が総合職へ移行。職種転換後に、管理職へとキャリアアップした女性社員もいるという。