人生はいつも、自分の想像を超えている

 日がな電話の前に座り、シーンとしたアナウンス部の灰色の景色に安らぎすら感じるようになっていた日々に、じっくりと仕事について考えることができて本当によかった。労組の委員として9年もの間、人間らしく働ける環境について真剣に考えたのも財産です。ワークライフバランスやジェンダー平等など、2010年代に広く社会で議論されるようになったことを早くから考えることができたのは、局アナとして「女子アナ」というコンテンツと葛藤し、労組の執行委員・副委員長として制度の改善に取り組んだ経験があったからです。

 先日、仕事でご一緒した尾木直樹さんが「この間、TBSの人に“働きやすい制度が整っているのね”と言ったら、“かつて小島さんが頑張ったんですよ”と話していたわよ」と教えてくださいました。アナウンサーとしては「辞めてしまった人」かもしれないけど、労組の活動を通じて、私のことを覚えていてくれた人がいたことが嬉しくて、ちょっと泣きそうになりました。

 私がいたころには実現できなかった周辺企業との合同託児所の開設など、先進的な取り組みが進んでいます。先日も知人がTBSでジェンダーに関する研修を行ったところ、大盛況だったそうです。放送局も確実に変わってきているのだなと、心強いです。

 もしも今、育児との両立でキャリアに行き詰まりを感じたり、子どもを足かせのように感じることがあっても、どうか焦らないでください。未来の自分は恩知らず。先のことを考えて悩んでも、振り返る時には「あの頃は視野が狭かったな!」などと言いがちです。

 それよりも、今の自分をいたわりましょう。今できることを、できる範囲で地道にやるうちに、きっと思いがけない世界との出合いがあるはずです。人生はいつも、自分の想像を超えています

(タイトルバナーの写真/稲垣純也)