電話取りをして過ごす日々、視野が広がった

 当時はそんな言葉もなく、なぜこんなひどいことを面と向かって言われなくてはならないのだろうと悔しくてなりませんでした。

 「電話を取るのだって立派な仕事だよ。私はちゃんと働いているのだから、あなたにそんなことを言われる筋合いはない」と言い返したものの、彼の冷笑するような眼差しは忘れられません。以来、やつの名前は、私の中ではハラスメントの殿堂入りです。

 しかしそれを機に、アナウンサー以外の仕事についても考えるようになりました。私がやりたいのは本当にアナウンサーなのかな? もしかしたら他にも向いている仕事はあるかも。労組で副委員長をしていたので、会社と一緒に制度づくりをすることにはとてもやりがいを感じていました。

 そうか、番組を通じてリスナーや視聴者とつながるのも、制度を通じて会社の仲間とつながるのも、人が喜んでくれることには変わりがないよな。私がやりたいのは「アナウンサーであること」ではなくて、「人の役に立つこと」なんだ!

 そう思ったら、急に視野が広がりました。人事部や労政部、教育研修部の仕事には興味があるし、たぶん割と向いているはず。そこで人事部のアンケートで初めて、「現在いる部署以外でも働いてみたいと思うか」に「はい」と回答したのです。もしもあの時、異動していたら、きっと社内の働き方改革や人材育成、研修などに力を注いで、かなり充実した会社員生活を送っていたのではないかと思います(今でもちょっとやってみたい)。