2020年4月に軽井沢町で、インターネット通販大手・楽天創業の中心人物だった本城慎之介さんが理事長を務める幼小中一貫教育校「軽井沢風越学園(かざこしがくえん)」が開校予定。自然豊かな環境の中、既存の概念を超えた学校づくりへの挑戦を応援する長野県の教育環境には、「子どもによりよい教育を」と願う意識の高い親から熱い視線が注がれている。

「経営」「実践」「哲学」の第一線で、次世代を育成する“教育”に真摯に取り組んできた3人の出会いから構想が生まれた、軽井沢風越学園。前回、「新しい普通をつくる」という目標を掲げ、約2年後の開校に向けて準備活動を続ける本城慎之介さんと準備財団の副理事長の岩瀬直樹さん(東京学芸大学大学院准教授)に、理想の教育のあり方や従来の教育の課題について詳しく話を聞いた。本城さんは5児の父、岩瀬さんは3児の父。最終回では、子どもの健やかな成長を見守る学校と親の関わり方やご自身の子育て観について紹介する。

【軽井沢風越学園理事長×副理事長インタビュー】
(上) 本城慎之介 楽天副社長から風越学園設立、父の挑戦
(中) 岩瀬直樹 いじめや固定的役割は異年齢教育で弱まる
(下) 学校の中でわが子だけが幸せになることはきっとない ←今回はココ

子どもは、たった一人で育っているわけではない

日経DUAL編集部(以下、――) わが子が通う小学校に対して、親はどのように学校と連携していったらいいのでしょうか。

岩瀬直樹さん(以下、敬称略) 学校と親ってどうしても対立しがちで、その理由は、預ける・預けられるという関係性になりやすいからです。僕はそれが違うと思っていて、ゴールは同じ子の幸せや同じ子の成長を願うもの同士だからどうやって力を合わせられるかというのがベース。学校も親から文句を言われないようになりがちだし、保護者も子どもを人質に取られているんじゃないかとよくいわれるけれど、それってすごく不幸だなと思うんです。「同じ子の成長を願うもの同士、一緒に面白いことがやれそう」という立ち位置で関わることって教員の側も親の側もすごく大事で、自分の子どもって自分の子だけで育っているわけじゃないんですよね。

―― 子育てをしていると、友達や親戚、学校の先生、習い事の先生など様々な人から影響を受け、親子ともども育ててもらっていることを強く感じます。

岩瀬 その環境の中のたくさんの人と関わって育っているから、学校の中でわが子だけが幸せになるってことはきっとないんですよ。そこにいるメンバーみんなが幸せになっていくと、うちの子も幸せになっていく。親の学校への関わりはいろんなチャンネルがあるはずで、学校に関わることを面白がることができるというのは大切です。僕も読み聞かせボランティアを子どもの学校でやって先生と話をしたり、保護者の人にどの本が良かったですかと聞いたり、自らチャンネルを作っていくと、関われる機会って増えていくんですよね。学校の先生は担任として子どもと関わりながらも、そうやって関わってくれる大人を待っているものです。やはり顔が見えないから怖いということもありますので……。特に、父親って関わるのが下手な人が多いですよね。

―― ちょうど昨日、初めて夫に小学校の個人面談へ行ってもらったのですが、子どもを褒めてもらったり、気になることを聞けたりと先生と色々な話ができたようです。

岩瀬 僕も、わが子の小学校の懇談会に出ると男性は一人でしたからね。それくらい少ない。でも、性別問わず親が一緒に何ができるかというのはすごく大事です。僕は小学校で担任をしているときに、アナログの交換日記を保護者全員でまわすということをしていたんです。メールではなくノートのほうが皆さん緊張感を持って書くので、感情的にならなくていい。続けていると順番がまわってくるのが、楽しみになってくるんですよね。時々僕も交換日記に参加しました。日記がきっかけで保護者のオフ会が生まれたりしました。みんな関わりたいとは思っているけれどチャンスがないし、何となく面倒なものだと思ってしまう。確かにちょっと面倒だけれどその分、絶対にいいこともあるし、顔を知っているとトラブルがあっても謝りやすい。うちは真ん中の子は男の子なんですが、その子の保護者会に行ったときは、「絶対うちの子何かやらかすと思うので、何かありましたら遠慮なく電話ください」って言っておいたりしました。すると、大きな問題なく1年を過ごせるんです。

―― 顔が見えるかどうかはとても大事ですね。

岩瀬 そんなふうに関わっていくと、学校とか自分の子の友達の存在が面白くなっているはず。ああ、自分の子ども時代はこうだったなとか思い出しながら、関わることを面白がるということをこれから大人ができるといいなぁと思います。

―― 本城さんの価値観が変わったたき火の話につながると思うんですが、それが成り立つのは保護者との信頼関係ができていたということ。その幼稚園はどのように親との信頼関係を築いていったのでしょうか。

本城慎之介さん(以下、敬称略) コミュニケーションの量ですね。幼稚園は毎日朝夕の時間帯に保護者と会えますよね。そこで子どもの様子を伝えたり、家での様子を聞いたり、子どもの様子だけではなくて、「お母さん今日疲れています? 体調悪い?」 「髪の毛を切ったんですか?」など、子どものことだけでなく、保護者にもしっかり伝えてあげている。会話がうまいとか下手っていうよりも量だと僕は思っているので、それを僕はすごく意識していますね。

(右)軽井沢風越学園設立準備財団理事長 本城慎之介さん、(左)軽井沢風越学園設立準備財団副理事長 岩瀬直樹さん(東京学芸大学大学院准教授)

次ページから読める内容

  • いい環境は待っていても来ない 自ら関わる場をつくっていく
  • 本城家の家訓 遅くても高校生になったら家は出てほしい
  • 親は子どもが考えるための選択肢や情報を提示 最後は「子どもが決める」
  • 育休を経験「子育て交流の場へ行くのはハードルが高かった」
  • 子どもが一人で生きていけるようになることが、子育てのゴール
  • 子どもも大人も面白い 変化し挑戦し続ける学校に

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