発達障がいの長男の育児を通して収育のヒントを得る

 そう、よく聞く食育ならぬ、“収育”です。食育基本法が制定されたのが2005年のことで、あれから10数年ほど経って、今や誰もが知るワードになりましたよね。食育は、体にいい食べ物を選ぶ力を身につけて、健康になりましょうという考え方。それと同じことが片づけにも言えるんじゃないか、と思ったんです。

 なぜなら、食べ物を選ぶ力と同様に、“モノを選ぶ力”もとても大事だからです。テレビの収録で、いわゆるゴミ屋敷と呼ばれるような、かなり多くのモノを溜め込んだ方のお宅に行くことがありますが、必要なモノを不必要なモノが覆っているような状況になっています。自分にとって必要なモノをきちんと選べていない状態だから、散らかってしまっているんですね。

 だから、まずは必要なモノだけを家に取り入れることが大切ということから知らなければいけない。けれど、人に伝えるためには“伝えることのできるプロ”を育てる必要があると思いました。収育の“育”という文字には「育児・教育・育成」の3つの意味を込めています。そして収納を通して、子どもも大人も幸せに生きる力を育むこと、それが収育の根本的な概念です。

 子どもから大人まで誰でも身につけてもらえるように、収育を広めていくことが僕の夢になりました。僕は今5歳と3歳の子どもがいるのですが、「お父さんって何してるの?」と友達から聞かれたときに、名前も知らない芸人よりは「収育を作った人だよ」と言って、胸を張らせてあげたい。そんな思いも心のどこかにあります。

 2人の子どもたちを育てる経験は、収育を伝えることにもダイレクトに役立っています。うちの長男は実は発達障がいで、思ったようには子育てが進みません。今5歳ですが、言葉もあまり上手ではなく、とにかく何をするにも時間がかかります。

 でも、発達障がいの子どもを育てるという経験を通して、多くのことを勉強させてもらっていると感じています。普通にできることができない分、こんな風に伝えたら分かってくれるんだ、こういうことを収育に取り入れていったらいいんだと、時には失敗しながらも、人を育てるということのヒントをたくさんもらえるんです。今は発達障がいで悩んでいる方もすごく多いので、そういった自分の体験も収育に盛り込んでいけたらと考えています。

 正直な気持ちを言うと、以前は「父親が喋る仕事をしているのに、なんで息子は喋られへんねん」という思いがありました。僕も妻も息子が発達障がいという事実を心のどこかで信じたくなくて、あまり公にしていなかったんです。でも、自分の体験を伝えることが使命だと思うようになってから、発達障がいの息子の育児に対してもポジティブな態度で取り組めるようになりました。

 今は息子のことを隠して生きるより、ちゃんとオープンにしたうえで、同じ環境で悩んでいる人の意見を聞きながら、そして伝えながら、やっていきたい。発達障がいは苦手なことが多いだけ。個性なんだと、今はそう思っています。

 5歳と3歳、しかも一人は思うように言うことを聞いてくれない、そんな子どもたちがいたら、当然部屋の中もしっちゃかめっちゃかです。「コジマジックさんのおうちって、どんな感じなんですか?」「さぞかし片づいているんですよね」とよく言われますが、とんでもない。いつも地獄のように散らかるのが現実です(笑)。

 でも、散らかるのは仕方ない、大事なことは、その後にどう片づけるか。それが収育であり、その理念を世の中にもっと広めていけたらと頑張っているところです。

(取材・文/宇野安紀子)