「片づけの正解」を作ろうと思ったわけ

 でも、「収納王子」として世の中に出たときは、実は芸人仲間からは大ブーイングを受けました。「あいつはネタも作らんと、人の家ばっかり片づけて何してんねん」と。芸人は笑いだけをやるもの、という時代でしたから。

 それが、『ソロモン流』(テレビ東京)や『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ)といった番組に出るようになると、芸人からの見られ方も変わりました。そういう売れ方もあるんだと、みんなが認め始めてくれたんです。

 でも今度は、片づけ業界から叩かれ始めました(苦笑)。片づけというのは、モノを「出す・分ける・しまう」の3工程が必要なんですが、僕の番組を見た人はとりあえず100円ショップのつっぱり棒を買おうとする。きちんと工程を踏まないまま便利グッズだけを買うから、使わないモノがさらに増えて、本来の意味では片づかないじゃないか、と言われたんです。

 そういう指摘については、実は自分でもそう感じていました。けれど、テレビ業界で視聴率を取るには、効率よくキャッチーなところを切り取るしかない。僕は番組から求められていることをやるほかないし、テレビに出たい気持ちもある。でも片づけ業界からは叩かれる…。自分のやっていることは本当に意味があることなのか、今度はそんな葛藤を抱えるようになりました。

 そんなころ、東日本大震災の被害で仮設住宅に住んでいる方から手紙をいただいたんです。僕が出ている番組で見た収納テクニックを真似したら、片づけが楽しくなった、と。家が震災で潰れてしまって、この先どうしたらいいんだろうと落ち込んでいたけれど、頑張って生きて行こうという前向きな気持ちになれて、今は仮設住宅の片づけのボランティアをやっている、ということでした。

 その方の話を聞いて、「僕が出たテレビを見て、頑張ろうと思ってくれる人がいる。テレビに出る意味はあるんや」と思ったんです。テレビにはテレビの伝え方がある。きちんと伝えなきゃいけない本質の部分は、自分で出向いていって、直接伝えていけばいい。そう思って、講演会の活動を始めました。

 今は年間約200講演をこなしています。1日6講演やったこともあって、さすがにそのときは声が出なくなってしまって、これが自分の限界なんだなと分かりました。僕の体は一つしかない、でももっともっと全国の人たちに伝えていきたい。そう思ったとき、「“検定”を作れば、もっと効率よく、多くの人に伝えられるんじゃないか」と思いついたんです。

 僕が10年前に片づけを伝え始めたときは、整理収納系の資格は整理収納アドバイザーくらいしかありませんでしたが、今は片づけに関する資格が30以上あります。世の中がずいぶん整理収納に興味を持ってくれるようになった結果だと思いますが、それでも「検定」はありませんでした。なぜなら、片づけは十人十色で、一つの答えを見出すことは難しいからです。

 でも、僕はそこにあえて「片づけの正解」を作ろうと思いました。検定なら、たくさんの人に安価でメソッドを伝えられる。でも、それだけだとなんだか弱い。もっと多くの人の心に刺さるものはないかなと考え抜いた末に、“収育”というコンセプトが思い浮かんだんです