「収納王子コジマジック」こと一般社団法人日本収納検定協会代表理事の小島弘章さんが唱える“収育”についてお伝えする本連載。

 第2回は“収育”の理念について、詳しく伺っていきます。片づけをできるようになるとどんな効果があるのか。ただ部屋が奇麗になるだけにとどまらない、たくさんの「お得」があると小島さんは力説します。そして、子どもに片づけを教えるには、まずは大人から。私たち親が学ばなければならない、片づけの基本についても教えてもらいました。

なぜ「片づけられない子ども」が増えているのか

収納王子コジマジックさん
収納王子コジマジックさん

 前回、“収育”という言葉には、収納と「育児・教育・育成」の3つの意味が込められているとお伝えしました。片づけを通じて、子どもも大人も幸せに生きる力を育むこと、それが収育の根本的な概念です。「片づけが幸せや生きる力につながるなんて大げさじゃない?」と思う方もいるかもしれません。今回はそのことをもう少し詳しくお話ししたいと思います。

 僕たちが生きていく上で最も大切なこととは何でしょうか。それは、「人、モノ、時間」です。モノを大切に扱う行為は、人に対する思いやりの心を育みます。また、子どもが自分のモノは自分で片づける、自分のことは自分でやる習慣を身につけることは、自立にもつながります。

 最近では、片づけられない子どもが増えているといわれています。それは社会の変化と、昔ながらの整理整頓の考えとの間に、少しずつギャップが生まれてきていることが原因だと僕は考えています。モノが安価に、いつでも手に入りやすくなった反面、モノを使う子どもの数は減少の一途。結果的に、子ども一人当たりのモノの所有数が急増しているのです。

 共働き家庭が増えたり、塾や習い事などで子ども自身の時間が減ったりして、大人が子どもに片づけを教える機会が減っていることも原因の一つかもしれません。

 収育の目的は、身の周りのモノを大切に扱い、自分や周りの人が使いやすいように片づけられる子どもを育てることです。その結果として得られるのは、「心地よい空間を維持できる」という環境面の効果だけではありません。「自分のことは自分でやる」という“自立心”や、他者に配慮ができる“思いやりの心”を育みます。また、収育のプロセスを通じて、親も子どもの自立を見守る姿勢を学ぶことができて、適切なタイミングで親離れ・子離れができるコミュニケーションにもつながります。収育を通して、大人になったときに社会の一員として生き抜くために必要な力を伝えられるのです。