離婚調停で話し合いが長引く要因の一つが「親権」です。子どもがいる夫婦なら離婚を考えたときに真っ先に心配に思うことであり、たとえ夫婦が別々の道を歩むことになっても、子どもとは一緒にいたいと思う気持ちは互いに譲れないものでしょう。また、離婚後も子どもへの影響を最小限にし、できるだけそれまでと変わらない生活をと考える上では、養育費のこともきちんと確認しておきたいところ。今回はこの2点を中心に見ていきます。

【離婚大全 特集】
第1回 もう無理…まずは離婚のプロセスを知ろう
第2回 弁護士に聞いた、離婚でもめるポイントと「対策」
第3回 知っておきたい 親権と養育費の実態 ←今回はココ
第4回 本当に離婚がベスト? 別居との比較

 民法では、親権は「未成年の子どもを監護(監督し、保護すること)および教育し、財産を管理し、子どもの代理人として法律行為をする権利や義務」と定義されています。婚姻中は子どもの父母(夫婦)が共同で親権を持ちますが、離婚する場合には、どちらか一方が親権者となります。

親権者は「妻が有利」という現実

 現状では、夫婦ともに親権を望んだ場合、妻のほうが親権を得やすいといいます。それはなぜでしょうか。徳原聖雨弁護士が解説します。

 「親権を決める上で争点となるのは、『環境の変化を最小限に、子どもが心身ともに健全に過ごせるか』ということ。現在の日本の法律のベースは、昭和型の専業主婦家庭を主に想定しているため、母親と一緒に暮らしたほうがこれまでに近い生活を送れるとみなされる家庭が多いのです」。これを「母性優先の原則」と言います。親権は子どもの利益のために規定されている権利であり、母親の方がよりその任にふさわしいというわけです。

 現実を見れば、家族像は大きく変化し、父親の育児へのコミット度合いは昭和の頃に比べてはるかに大きくなっています。そうした社会の変化を反映してか、「親権を持ちたいという父親からの相談が増えている実感があります」と小杉俊介弁護士は話します。しかし、仮に夫婦が半々で育児を担っていたとしても、やはり母親が親権をとりやすいのだそう。父親からしたらやるせない気持ちになる話ですが、これも離婚の現実として知っておきましょう。

 ただし、夫側が親権者になれるケースもないわけではありません。「子の福祉は最大優先事項なので、基本的には妻が優先されますが、別居段階で子どもが妻と一緒に暮らしておらず、夫側が子どもを育てているような場合は別です。継続性の原則から、基本的には現状を動かしませんので、親権者が夫になる可能性があります」(小杉弁護士)

<次のページからの内容>
・15歳以上の親権は本人の意思を重視
・子のためにも、親権を「相手と取り合う」発想から離れて
・親権を持たなくても、親の役割は消えない
・養育費の額は離婚原因に左右されない
・共に会社員なら養育費は子ども1人で一桁台が相場