昨年行った離婚に関する読者アンケートで、離婚経験があると回答した89人に「離婚を決意してから実際に離婚成立までにかかった期間」を聞いたところ、最も多かったのは「1年未満」47.2%で、続いて「1年以上2年未満」が24.7%、「2年以上3年未満」が12.4%でした。8割強の人が3年未満で離婚が成立していますが、中には5年以上かかったというケースも。離婚成立までには乗り越えなければならないさまざまなハードルがあるのです。特集の第2回では、スムーズに離婚を成立させるための「対策」について引き続き弁護士のお2人に聞いていきます。

【離婚大全 特集】
第1回 もう無理…まずは離婚のプロセスを知ろう
第2回 弁護士に聞いた、離婚でもめるポイントと「対策」 ←今回はココ
第3回 知っておきたい、親権と養育費の実態
第4回 本当に離婚がベスト? 別居との比較

「性格の不一致」は法的な離婚事由にならない

 離婚に向けてアクションを起こす際はまず、「なぜ離婚したいのか」を整理しておく必要があります。理由が明確であれば、弁護士に「離婚できるのか」「相手からお金がとれるのか」といったことを聞く際にも効率よく相談を進めることができます。「家庭内で起きたことを時系列でまとめてあると相談時間を有効に使えますし、後から振り返る際の資料としても残るので、調停や裁判の際に役立ちます」と徳原聖雨弁護士。

 また、離婚事由として法的に認められている項目も押さえておきましょう。

  • 不貞行為
  • 重大な精神病で回復の見込みがない
  • 悪意の遺棄
  • 行方不明(3年以上の生死不明)
  • その他、婚姻を継続しがたい重大な理由(長期間の別居、お金を一切入れない、暴力などドメスティックバイオレンス<DV>を含む)

 「悪意の遺棄」とは、民法第752条に定められている夫婦間の「同居、協力、扶助の義務」を正当な理由なく怠ることを指します。

 つまり、読者アンケ―トで離婚を考えるきっかけとして最も多かった「性格・価値観の不一致」では離婚事由としては認められにくく、極端に言えば浮気や暴力以外で離婚事由を成り立たせるのは難しいということにもなります。また自分に経済力がある場合、相手の稼ぎが少ないから離婚したいというのも、認められにくいということになるでしょう。

 アンケートで具体的に挙がった「家事・育児で常に不公平感を感じる」「モラハラされる」「生活費を一切渡さない」「セックスしたくないのに強要される」などの行為は、道義的に見て当然非難されるべきものかもしれません。しかし、それが離婚に至るやむを得ない原因として法的に認められるかはまた別問題なのです。

 とはいえ、上記の行為を原因とした離婚が絶対に認められないというわけではありません。「一時的に夫が仕事をしなくなった程度では婚姻を継続しがたいとは判断されませんが、年単位で働かない、妻の収入でギャンブルをしているなど様々な要因が重なることで認められるケースはあります」と徳原聖雨弁護士は言います。

<次のページからの内容>
・「まずは別居」で離婚調停をスムーズに
・夫婦の財産は「ガラス張り」が鍵
・「生活費を入れない」は共働きでも離婚の理由になる?
・浮気の証明は「間接的証拠」ではダメ
・性生活のギャップが離婚の理由と認められるケース
・DV、モラハラは「日記」「音声」「診断書」をそろえる