昨年9月に日経DUALが行った「夫婦関係と離婚」に関する読者アンケートでは、回答者412人のうち、実に7割以上が「離婚したいと考えたことがある」ということが分かりました。離婚を考えたきっかけについては、上位から「性格・価値観の違い」49.8%、「家事・育児分担の不公平」35.2%、「モラハラ(言葉の暴力など)」26.8%、「子どもへの教育観の不一致」21.3%、「性生活でのギャップ(セックスレスなど)」21.1%といった結果に(複数回答可)。どれも程度の差こそあれ、結婚生活を送っていれば誰もが心に抱いたことのある問題ではないでしょうか。

厚生労働省の人口動態統計によると、2016年の離婚件数は21万6798件。ままならない状況から抜け出し、前向きな一歩を踏み出すための選択肢として離婚はもはや特別なことではありません。一方で、成立に至るまでには慰謝料や子どもの親権、財産分与など夫婦間で取り決めなければいけないさまざまな問題があります。予備知識や心構えのないままに臨んで話し合いがこじれると、想像以上に多くの時間とエネルギーを費やすことになりかねません。

そこで改めて、「離婚」の実務的な手続きやリスクなど、押さえておきたい基礎知識を特集。「もう離婚しかない!」と思い定めている人も、相手へのモヤモヤが芽生えつつある人も、実態を知ることで波立つ心にいったん区切りをつけてから、新たな年を迎えませんか。

【離婚大全 特集】
第1回 もう無理…まずは離婚のプロセスを知ろう  ←今回はココ
第2回 弁護士に聞いた、離婚でもめるポイントと「対策」
第3回 知っておきたい、親権と養育費の実態
第4回 本当に離婚がベスト? 別居との比較

 ワイドショーなどで目にする芸能人の話題の印象から、離婚といえば夫婦間の話し合いがもつれて泥沼化し、双方が疲弊する…、などというイメージを抱く人も多いかもしれません。果たして実態はどうなのでしょうか。本特集では、離婚問題を含めた民事案件に詳しい小杉俊介弁護士、徳原聖雨弁護士のお話を交えて、離婚の現実を見ていきます。

 「結婚が婚姻届を自治体に提出すれば成立するように、法的には離婚届を提出すれば離婚は成立します」と小杉弁護士。離婚届の用紙は法務省のホームページでダウンロードすることも可能で、必要事項を記入して届出人の本籍地または所在地の役所に提出すれば手続きが終了します。届け出自体はいたってシンプルですが、そこに至るまでにさまざまなプロセスがあります。

夫婦で話し合いが成立すれば協議離婚、決裂すれば調停→裁判へ

 離婚には大きく分けて2つの流れがあるといいます。1つは夫婦間の話し合いだけで成立する「協議離婚」。いわゆる「争い」に発展しない、届出までがスムーズに進むパターンです。

 もう1つが、話し合いでは合意に至らない場合や話し合いそのものができない場合に、家庭裁判所の調停手続を利用して離婚する「調停離婚」です。調停では離婚後の子どもの親権者を誰にするか、親権者ではない親と子の面会交流をどうするかといった点をはじめ、養育費、財産分与や年金分割の割合、慰謝料といった財産に関する問題も一緒に話し合うことができます。

 調停で合意に至れば「調停離婚」となり、合意ができなかった場合は離婚の裁判を起こすことになります。これが「裁判離婚」です(法務省では裁判離婚に「判決離婚」「審判離婚」だけでなく「調停離婚」も含めています)。

 なお、日本では「調停前置」という制度があって、初めから合意できないことが分かっていても、裁判の前に原則として調停の手続きを取る必要があります。

<次のページからの内容>
・離婚全体の9割は「協議離婚」
・「お金」「子ども」についての取り決めは慎重に
・弁護士選びで重視すべきポイントは?
・早めの相談が「最高の離婚」への近道
・調停にはどれくらいの期間がかかる?