アンケートの結果を通して、共働き子育て世帯の多くが、家の中にモノが多いこと、そしてそれが使いやすく整理整頓されていない状態にあることが分かりました。仕事と子育ての両立は毎日が時間との戦い。日常使うモノが使いやすい状態になっていなければ、ささいなことに時間のロスが生じ、ストレスも積み重なっていきます。

 子育て中の家庭が目指すべきは「おしゃれ空間」でも「ステキ収納」でもなく、「生活しやすい状態に家の中が整い、それが持続すること」。では、どんなことをすればそれが実現するのでしょうか。共に現役デュアラーでもあるライフオーガナイザーの会田麻実子さんと整理収納アドバイザーの大村信夫さんに、「現実路線」の片付けの考え方や実践方法について聞きました。

【子育て中でもできる ミニマムな暮らし方特集】
第1回 「モノが多く整理整頓もできていない」は共通の悩み
第2回 大切なのは「捨てること」ではなく「分けること」 ←今回はココ
第3回 散らかっても、毎日の「リセット」で持ち越さない
第4回 手放すモノどうする?フリマ出店&フリマアプリ体験

長期的なスパンで片付けを考えると、気持ちが軽くなる

 「今の家に引っ越してきたのは9年前ですが、そのときに家の中を整理したら、使っていないトイレットペーパーの袋が押し入れや納戸など、バラバラのところから6つ出てきたんですよ」。アメリカ発祥の整理・片付けの考え方「ライフオーガナイズ」を学んだライフオーガナイザーの会田麻実子さんは、そう言って笑います。会田さんは子どものころから片付け下手。結婚してからも「幸か不幸か、夫も片付けにおおらかだった」こともあり、洗濯物も畳まず部屋に山積みで、必要なものは「発掘すればいいや」という生活だったそうです。

 息子が生まれていっそうモノが増えると、「家の中に何があるか」の管理が完全に限界を超える事態に。何とかしたくてもできないままだった会田さんが変わるきっかけになったのは、引っ越しの際に「自分が本当に使いたいと思うものだけを持って行こう」と決めて、大量のモノを手放したことでした。

 「山盛りになったごみ袋が部屋の隅に積んであったあの光景を思い出すと、つらかったな、もったいなかったなという心の痛みもよみがえってくる。それからは、モノを買うことにも以前より慎重になりました」

 その後、片付けについて勉強しようと決意した会田さんはライフオーガナイザーの資格を取得。自身も仕事と子育てとの両立生活で、家の中をどうにかしたくても時間がないというジレンマを経験したことから、会田さんはまず「片付けを長期的なスパンで考えてみてほしい」とアドバイスします。

 「今悩んでいることが、5年後も大きな問題かというと、必ずしもそうではありません。今は子どもが小さくて思うように片付けられなくても、3年経ったら今より時間の余裕もできる。そうやって全体を俯瞰してみると、今、そこまで片付けに力を入れなくてはいけないのか、ということにも気付いたりするんです」

 会田さんは片付けのコンサルタントの仕事を通して、「片付けられない自分はダメなのではないか」と追い詰められる人たちをたびたび目にしてきました。今すぐでなくても、完璧でなくてもいいと思えることで、片付けに向き合う気持ちがぐっと軽くなるのです。

引っ越ししてモノは減らせたものの、片付けがまだできていなかったころの会田さん宅。「以前より収納が減ったこともあって、いろんなものを床に置いてしまっていました」(会田さん)
引っ越ししてモノは減らせたものの、片付けがまだできていなかったころの会田さん宅。「以前より収納が減ったこともあって、いろんなものを床に置いてしまっていました」(会田さん)
<次のページからの内容>
● 手を動かす前に、目指すゴールと「大切な光景」を考えてみる
● 自分に合う「4つのカテゴリ」でモノを分類
● 「利き脳」から、自分に合う収納方法を探してみる
● 散らかっているせいで、毎朝家の中が険悪ムードに
● 片付けは理屈。「どうすれば戻しやすいか」を考えてみる
● 「整理」が、片付けの成功の8割を占める
● 片付けた後も、よりよい形に見直すPDCAサイクルが大切