子どもは褒め言葉を必要としない。正しい環境があればいい

―― ここさえ大事にしたら、「生涯の人格の基礎は3歳までにできる」とご本にも書いてありますよね。

相良 それは特別にいい子ちゃんになりましょうということではなくて、秩序をきちんとしてあげて、いつもの順番にしてあげる。いつもの場所に置いていつもの場所に片づけるようにする。誰のものか分かるようにしてあげて、そして自分でできるようにしてあげる。それさえすれば人格は自然とできてしまいます。

―― 中身のない声かけではなくて、して見せるというお話がありました。声かけに似たワードに、「褒める」というのがあって、最近の親はとにかく褒めろ褒めろと言われて、1日・2日と実際にやってみるんですが途方もなくて。褒めようと思えば何でも褒められるし、内容によっては褒めながらもしらじらしいということもあるんです。例えば、右足・左足を出しただけで褒めたら、子どもに見透かされますよね。「褒める」ということについて、先生はどのようにご覧になっていますか?

相良 私ではありませんが、モンテッソーリが言うのには、子どもは褒め言葉を必要としない、かえって褒められるとがっかりする。内面からの充実感や自信を持っている子に変に褒めたり、ご褒美をあげたりするのは、子どもの内面からの尊厳を無視することだって。

―― 子どもに褒め言葉は要らない。正しい環境があればいいんですね。

相良 「自分でできた」という自己効力感ですよね。ある園長先生が嘆いていたんですけどね、幼稚園の先生に就職していた先生が、「私は小さいころからいつも母から褒めてもらったから、園長先生が褒めてくれないからやる気が出ない」って。

―― 親のやすやすしい褒め言葉よりも、内面の充足感が比較にならないほど子どもには必要だと。

相良 ご褒美もちっとも喜ばないっていいますね。本当に充実した子は、チョコレートをもらっても、お菓子をもらっても、ちっともうれしくない。