「女子にモテたい」「鬼は怖い」 男の子は単純でかわいい

 2人ともピアノを習っていますが、ヒロは地道にチマチマやることが好きじゃないから、練習もすぐイライラして投げ出します。何かやるときはすぐできないと嫌、野菜を食べない、好きなことしかやらない…もうね、ダメなところばっかり私にそっくり。自分もそうだったと思うと叱れません。

ピアノの練習開始5分後の図
ピアノの練習開始5分後の図

 そんなときにどんな手を使うかというと、「この曲が弾けたらモテちゃうかもよ!」「音楽の授業の前にピアノでこんな曲弾いてたら、ママだったら好きになっちゃうな~」とか、ひたすらのせる。そうすると、「え~、オンナできちゃうかなあ」ってニヤニヤ。男の本性見たり!です(笑)。子どもたちには見守りケータイを持たせていて、ヒロはよく私にメールを送ってくるんですけど、それが「ママ大好き」っていうメッセージと、画面を埋め尽くす大量のハートの絵文字だったりします。これ、大人がやったら変態ですよね。大丈夫だろうかうちの子は。

 でも、私は男の子を育てるほうが向いていたと思います。女の子ももちろんかわいいですけど、男の子は単純だから、色々とだまされてくれるので楽。例えば叱るときに「そんなことしていると鬼が来るよ!」って言ったら、うちの子は「うわーっ!」って本気で怖がって逃げ出します。かわいいものです。これがもし女の子だったら、冷静に「え、どうせ嘘でしょ?」みたいなことを言われちゃうんじゃないかな。

 「鬼は本当にいる」っていう世界観を刷り込めたのは、「おにから電話」っていうスマホアプリのおかげかも。「勉強しない時」「お片付けをしない時」とか、いろんなシチュエーションで鬼から電話がかかってきて、怖いビジュアルと声で叱ってくれるんです。ヒロはアプリの着信音が鳴るだけで泣きながらトイレに閉じ籠っちゃう。そんなとき私は「ふふ、バカめ」と心の中でほくそえんでいます(笑)。

今月のPOMのつぶやき

 確かに悪いところはよく似ています。母子3人とも、片袖片足がひっくり返った洗濯物ばかりです。たまにそのまま干しますが、取り込むときにキレイにしてしまう自分が少し悔しいです。

 そして鬼のことでもう少し。最近はスマホの中の鬼より、スマホを持った鬼のほうが怖いみたいです。ママの怒りを敏感に感じ取って、さっさといなくなります。

(取材・構成 日経DUAL編集部 谷口絵美)

二ノ宮知子

二ノ宮知子

1989年に漫画家デビュー。2004年に『のだめカンタービレ』で第28回講談社漫画賞少女部門を受賞。同作はドラマ化、アニメ化、映画化され、一大ブームを巻き起こした。2人の息子の「ダメママ」ぶりと夫・POMさんの「スーパーパパ」ぶりを描いたコミックエッセー『おにぎり通信』(集英社)は全3巻が発売中。現在は月刊Kiss(講談社)で『七つ屋志のぶの宝石匣』を連載している(単行本は既刊8巻。連載は手の病気の治療のためお休み中)。