子どもが生まれる前は、ふらりと出掛けて「気付いたら熱海」

 旅行のために仕事の前倒しとかは絶対しません。締め切りがあったらその日ギリギリまでやるのがマンガ家。独身の頃は、旅行の予定を入れてしまえばそれに間に合うように仕事をやるだろうと自分を信じていたのですが、何回か失敗しました。だから今は、月刊誌の進行と確実に重ならない時期に予定を立てます。

 ちなみに、夫婦二人だった時は今とは正反対の旅行スタイルでした。マンガの締め切り明けに「さあ、ちょっと買い物でも行こうか」って車で出掛けて、そのまま伊香保まで行っちゃったりしていたんですよ。「空が青いなあ、何だか温泉でも行きたいねえ」って。で、気付いたら熱海とか、よくやっていました。二人ともフリーの働き方だからできることですけどね。

 当時はまだスマホとかもなかったから、途中のコンビニでガイドブックを買って、観光協会の電話番号を調べて車の中から電話をかけて。「今日空いている宿ありますか?」って聞くと、親切に探してくれるんですよ。予算とか、お風呂は源泉かけ流しがいいとかいろいろ条件を言うと、ちゃんと合ったところを紹介してくれました。

 今は二人でどこかにぱっと行くとしたら、子どもが学校に行っている平日に「お昼、どこに食べに行く?」くらいしかないですね。自由度はすっかり狭まっちゃいましたが、コウも4月からはもう5年生、ヒロは2年生。子どもたちと一緒に出掛けられる時期もあっという間に終わるだろうから、まだまだ一緒に旅行を楽しみたいです。

 最近は引退したら旦那とどこに行こうかってことばかり妄想しています。あちこち旅しながらマンガを描くのもいいかなあ。『東海道中膝栗毛』みたいにね。

今月のPOMのつぶやき

 妻は昼に車で連れ出すと、必ずビールを飲みます。免許を持っていないので、運転は必ず僕です。なので、僕は必ずノンアルコールです。酒が飲めなくなるのがイヤだから免許は取りませんと宣言されました。田舎暮らしをする時に、免許を取る約束をしたようなしなかったような……。

取材・構成/谷口絵美

二ノ宮知子

二ノ宮知子

1989年に漫画家デビュー。2004年に『のだめカンタービレ』で第28回講談社漫画賞少女部門を受賞。同作はドラマ化、アニメ化、映画化され、一大ブームを巻き起こした。2人の息子の「ダメママ」ぶりと夫・POMさんの「スーパーパパ」ぶりを描いたコミックエッセー『おにぎり通信』(集英社)は全3巻が発売中。現在は月刊Kiss(講談社)で『七つ屋志のぶの宝石匣』を連載している(単行本は既刊8巻。連載は手の病気の治療のためお休みしていたが、4月発売号から再開予定)。