何かを頑張らせようと思ったら、親にも覚悟が必要

 そういうときに私は「もういいよ学校の宿題なんてどうでも」って思っちゃうんですよ。もちろんどうでもよくはないですけど、子どもがこれだけ頑張ったんだから、それくらいいいじゃないか、と。私なんてコウくらいの年のころは毎日暗くなるまでずっと遊んでましたから、それを思えばいつも本当にちゃんとやっています。で、私が「いいよ」って言っちゃうので、翌朝パパがフォローして宿題をやらせていました。

 私、子どもに泣くほど嫌がることをやらせるのって嫌なんです。ものすごく頑張っているのに、もっとやらせようなんておかしい。だってそれをやらなくたって別に生きていけるじゃないですか。この社会で、死ぬほど嫌なことはやらなくてもいい、逃げてもいいってことも教えなくちゃいけないと思っています。私自身、大人になってから逃げた経験があるので……。

 例えば、ゴルフを極めるために5歳から泣いてでもやらせるとか、東大を目指すとかありますよね。それは親も一緒になって、「お前と一緒にゴルフと心中する!」「お母さんも一緒に東大目指す!」くらいの覚悟があるならまだ分かるんです。でも、親がやらないのに子どもだけやらせるなんて無理。うちでもコウなら大丈夫だろうと思って、一時期一人でピアノ部屋に行かせて練習するよう言っていたのですが、ちゃんとできませんでした。今は、私かダンナかどちらかがついて見るようにしています。

 練習ができていなくて先生に怒られたときは、親も怒られたということ。特に子どもが小さいころは、親がやりたくない程度のことを子どもに強制するのはないと思っています。

今月のPOMのつぶやき

 コウは主に女性には優しいみたいです。僕に優しいときは、何か隠し事があるとき。ランドセルの奥から、点数低めの答案が出てきたりします。まるでのび太。

(取材・構成/日経DUAL編集部 谷口絵美)

二ノ宮知子
二ノ宮知子 1989年に漫画家デビュー。2004年に『のだめカンタービレ』で第28回講談社漫画賞少女部門を受賞。同作はドラマ化、アニメ化、映画化され、一大ブームを巻き起こした。2人の息子の「ダメママ」ぶりと夫・POMさんの「スーパーパパ」ぶりを描いたコミックエッセー『おにぎり通信』(集英社)は全3巻が発売中。現在は月刊Kiss(講談社)で『七つ屋志のぶの宝石匣』を連載している(単行本は既刊8巻。連載は手の病気の治療のためお休み中)。