失敗してもまた新しいステップを踏み出すことができる

野田 そういう経験をしたのち、色々なことがあってまた自民党という職場に戻るんですが、まあ、隅っこのほうにいまして。するとあるとき、党内の若い子たちが私のところに来て、「消費者団体の人たちと仕事をしたいと思います。これからは消費者目線で仕事をしなくちゃいけないです」といいことを言うんです。「それで何?」って聞くと、党内で消費者問題調査会を作りたいと。自民党のルールで調査会の会長は大臣経験者でないとできなかったので、暇そうな野田聖子に会長になってほしいということでした。

 私でお役に立つことがあれば、と「看板」のつもりで会長を務めさせていただいたところ、ちゃんと勉強しないと突っ込まれちゃうんですね。それで必死に消費者行政の勉強をしていたら、福田(康夫)総理が誕生します。福田総理の悲願は、消費者庁という役所をつくること。そのためにはパートナーが必要だと党を見渡したところ、おまえしかいない、ということで抜擢されるわけです。あのときは、心ならずも郵政民営化に賛成してしまった多くの国会議員たちが白い目で私を見ていたことを今でも忘れることができません。

 でも逆に言うと、これは皆さんに伝えたいことなんです。その場で失敗したり、対立して自分の意見が通らなかったりして、一時はつらい目に遭うかもしれないけれども、やはり自らリサーチして、正しいと思ったことをきちんと言い通せば、それを後々評価してくれる人たちがまた別なところで手を差し伸べてくれます。私はそれまで情報通信や郵政事業が得意分野でしたが、暇な間に消費者行政という新しい専門知識を身に付けたことで、また新しいステップを踏み出すことができたんです。

ガチでけんかをしてきた相手は総理大臣だけ

―― リーダーシップについてもお聞きしていきたいと思います。一緒に仕事をする人たちを幸せにするための極意はありますか?

野田 秘書さんに言っているのは、「賢いふりをしなくていいよ」ということです。分かったふりをしなくていいし、分からなかったらそう言ってほしい。私はあなたたちに思い切っていろんな仕事をしてほしい、しくじって相手を怒らせたりしたときに、謝りに行くのが私の仕事だからと言っています。ある程度指示は出すけれども、基本的にはのびのびとやってもらっています。

 あとは、上にペコペコして、下にガツンっていうことが男性にはありがちですよね。私は逆です。これまでも政治家の世界で、ガチでけんかをしてきた相手は総理大臣しかいません。それはやっぱり、方向性を誤ってもらっちゃうと、私たちの人生に関わってくるから。

 ところが私、後輩の議員たちに何か言ったことってあまりないんです。いろんなプロジェクトも一緒にやるけれど、基本的に手柄はみんなで分けてよねっていう感じです。もう57歳ですから、もはや自分に手柄が欲しい年ごろでもないのでね。役所にいる副大臣や政務官といった、これから未来を担ってくれる30代、40代の部下たちを極力前面に出して、鍛えて、次に備えてもらいたい。

 いろんな人がいれば失敗もあるけれど、今の私のポジションでの一番の優位性は、私が謝れば大概の人は許してくれるということ(笑)。その最大のメリットを生かしながらの適材適所です。