日経DUALと日本経済新聞社はこの度、共同で「自治体の子育て支援に関する調査」を実施。その結果をもとに「子育てしながら働きやすい都市」をDUAL・新聞独自の指標でランキングしました。

 2018年度に68点を獲得し、同点だった栃木県宇都宮市と共に全国1位に輝いたのは、東京都新宿区。同区は2016年度にもグランプリを獲得しており、2015年に同調査が始まって以来の2度目の受賞を達成しました。区内にタワーマンションの建設が相次ぎ、共働き子育て世帯の流入が増えているなか、保育園の待機児童解消や病児・病後児対策、学童設置などの観点で、区としてどのような取り組みをしているのか。吉住区長自身の子育てや子育て支援に対する考え方と併せてお聞きしました。

【共働き子育てしやすい街ランキング2018】
(1) 共働き子育てしやすい街2018 総合ランキング
(2) 自治体調査 保育無償化は待機児童問題に大きな影響
(3) 共働き子育てしやすい街 上位50自治体と東京分析
(4) 地方自治体躍進の理由は? 全国編詳細リポート
(5) 2度目受賞の新宿区長「育児に社会的支援は不可欠」 ←今回はココ
(6) 病児を看護師が迎えに行ってくれる街、宇都宮市

日経DUAL編集部(以下、――) 今回の受賞の知らせを受け、どのようにお感じになりましたか。

吉住健一区長(以下、敬称略) 正直、大変驚きました。今はどの自治体も創意工夫しながら子育て支援に取り組んでいます。自分たちももちろん頑張っていますが、「待機児童がゼロになった」という他の自治体のニュースを耳にすることもあるので、ランキングがぐっと下がってしまうのではないかと、そちらの方が気になっていました。ですので、もう一度総合1位をいただけたことに驚いたのと同時に、職員たちが手を尽くして取り組んだ結果がこのように評価されたことは、大変うれしく思っています。

「街としての魅力が増すのは定住者が増えてこそ。そのため子育てしやすい街づくりに積極的に取り組んでいます」と話す新宿区の吉住健一区長
「街としての魅力が増すのは定住者が増えてこそ。そのため子育てしやすい街づくりに積極的に取り組んでいます」と話す新宿区の吉住健一区長

―― 新宿区というと、一般的には「住む街」というよりも「訪れる街」「仕事をする街」というイメージの方が強いかもしれません。その新宿区が子育て支援を重要な施策と位置付ける理由を教えていただけますか。

吉住 おっしゃる通り、新宿区は「住む街」のイメージがあまりないかもしれませんが、実は約34万人強の人口を抱えています。区政の基本はここに住み、暮らしを営む区民たちの生活をいかに支えるか、ということだと思っています。多くの人から子育てしやすい街だと考えていただき、定住者を増やしてこそ街としての魅力が増すというのが私たちの考え方。区内にはターミナル駅もあり交通の便も良いので、保育園などの子育て環境が整っていれば、子育て世代もここから仕事に出かけていくことができる恵まれた立地です。

―― 区長ご自身もこの新宿区内で、共働き家庭に生まれ育ち、現在、共働き育児をしているという、まさに当事者であると伺いました。

吉住 そうなんです。妻はフリーランスで仕事をしているので、例えば子どもが0歳のころは、夜9時以降のおむつ替えやミルクをあげる役割を私が担うなど、妻と役割分担しながら育児に積極的に関わってきました。自分が子どものころは三世代同居の時代だったので、同居する祖父母に面倒を見てもらっていたのですが、祖父母が早くに入院したり、他界したりしてしまったこともあって、途中からはいわゆる鍵っ子でしたね。今は、三世代が同居している家庭も少なくなり、祖父母のサポートを受けられる人も多くはないので、育児の社会的サポートは欠かせないと肌で感じています

―― 今回の調査では、特に0歳児と1歳児での保育園への入りやすさが高評価となりました。例えば0歳児においては、利用枠数770人に対して申請児童数742人ということで、事実上の待機児童ゼロと理解してよろしいでしょうか。

「我が家には待機児童がいます」とお叱りのメッセージが

吉住 残念ながらゼロという訳ではなく、2018年4月1日の段階で25人の待機児童がいます。

―― 区内全体でみると枠が足りていても、局所的には激戦のエリアもある、ということでしょうか。

吉住 そういうことですね。実は2016年にこの調査で1位をいただいた後に「我が家には待機児童がいます」とお叱りのメッセージが届きました。ですので「保育園に入りやすい」と評価していただけたことをうれしいと思うと同時に、いまだに待機児童ゼロは達成できてはいないことは肝に銘じたいと思っています。

―― 現在、待機児童解消において、一番のネックになっているのは何ですか?

<次のページからの内容>
● 待機児童解消のための不動産マッチング事業をスタート
● 保育士などへ提供する宿舎の借り上げ補助適用拡大
● 管理と支援の両方で保育園と密接に関わる
● 学童は全入。民間学童の運営支援も
● 区営の児童相談所開設を進める理由