日経DUALは日本経済新聞と共同で、主要162自治体に子育て支援制度について調査し、143自治体から回答を得ました。調査では、2019年秋を予定している保育無償化に関する質問や認可保育所を整備するに当たっての課題、学童保育の整備状況その他について聞きました。ここでは調査全体の結果を紹介します(有効回答数は136)。

【調査について】
・調査名:「自治体の子育て支援制度に関する調査」
・調査対象:首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、中京圏(愛知・岐阜・三重)、関西圏(大阪・兵庫・京都)の主要市区と全国の政令指定都市、道府県庁所在地の162自治体
・実施期間:2018年9月~10月
・回答数:143自治体

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保育無償化で待機児童ゼロが遠のく?

 保育に関する最大のトピックスと言えば、2019年10月から実施される幼児教育・保育無償化です。3~5歳児の認可保育所や幼稚園に預ける保育料は原則、全世帯が無償化。0~2歳児の保育料に関しては住民税非課税の低所得世帯について無償化されることになります。子育て世帯にとっては非常にありがたい施策である一方、保育無償化によってこれまで子どもを保育所に預けていなかった世帯の潜在需要まで掘り起こされて、待機児童ゼロが一層遠のくのではないかという指摘もあります。

 そこで今回の調査では、幼児教育・保育無償化が自治体の保育施策全般に及ぼす影響について聞きました。一番多かった回答はやはり「保育所への利用申し込みが増える」で77.9%、全体の8割近い自治体がそうした予測を立てていることが分かりました。

 続いて「市区町村の財政負担が増える」「待機児童が増える」「待機児童ゼロ達成の時期が遅れる」などが続き、逆に「影響はない」と回答した自治体は0.7%にとどまるなど、保育無償化はやはり自治体の待機児童施策に大きな影響を与えることになりそうです。

 その他の回答としては、利用申し込み、問い合わせの増加などに伴う事務負担などの増大を懸念する回答が多く見られました。

 それでは保育無償化に当たって、自治体としてそれ以上の施策、例えば保育無償化の対象世帯の拡大や、さらに保育料を値下げするなどの取り組みを独自に実施する自治体はあるのでしょうか。まず、「2019年秋以降、未就学児の保育料はすべて無償化する予定」と回答した自治体は皆無でした。「政府の無償化以上の取り組みはする予定がない」とする自治体は55.1%と半数以上に上り、「その他の制度により保育料を値下げする」が25.7%、無償化対象外の世帯に対しても「一部無償化する予定」が16.9%でした。

 取り組みの内容としては、第二子については年齢や所得条件などが付いたうえでの無償化、第三子以降の無償化などの回答が目立ちました。他と少し違った取り組みとしては、「保育料以外にかかる、給食費などの実費徴収分を無料にする」(千代田区)といった回答が見られました。