小学校1年生からの無試験先着順の「宮本算数教室」で卒業生の80%を首都圏トップ中学校に進学させてきた宮本哲也先生。常々、私たちはなぜ学ぶのか、何のために学ぶのかを問いかけ、「幸せになるために学ぶ」ことを明言し、宮本算数教室でも常に自分で考える力を育む授業を展開してきた宮本先生に、「幸せに生きるための算数」をテーマに、変化の激しい今の世の中で、子どもたちが幸せな生き方、自分らしく生きる生き方を身に付けるために必要な力のつけ方について、お話しいただく連載です。
最終回となる今回は、子どもの成長欲について。中学受験を視野に入れると親としてはどうしても「合格(成功)」をゴールにしてしまいがちですが、宮本先生は大事なのは子どもの「成長」だと言います。

 子どもは「成長欲」が強いものですが、私自身実は、この成長欲があまりに強く、同じことが繰り返し続くと嫌になってしまうたちです。算数教室はその点、細胞が入れ替わるように生徒が入れ替わり、同時に子ども自身が成長していくので飽きることがありません。成長による変化は見ていても興味深いものですよね。

 ところが最近の親御さんの中には、子どもが成長して変化することに対応できていない方も見受けられます。

成長に合わせて関係性を変えていく

 今の親御さんはマニュアル世代の方が多く、そうした親御さんは誰かに「これが正しそうだよ」と言われないと不安になりがちです。例えば「何歳ならこういう教育が必要」「何歳からこういう習い事をさせると効果的」といった情報を求めてしまう。でも自分の子どもが必要としていることは、本来、子ども自身をじっと見ていれば分かるはずなのです。

 3歳の子どもと小学校4年生の子どもが同じ扱いでいいわけがないことは分かりますよね。親は子どもを徐々に、親を必要としない人間に育てていかなければなりません。年齢とともに子どもの自己主張が増えるのはいいことなんです。「反抗」は成長に伴う自己主張の一つですから。

 ところが子どもが高学年になっても、3歳の子どものように扱う過保護・過干渉な親だと、「親に言っても無駄だし、ギャーギャー言われるのがめんどくさいから言いなりになっていればいいや」と思う子どもが出てきてしまいます。

 これでは子ども自身の成長欲が、ストップしてしまいます。

 私自身は教室では、生徒をじっと見ているだけです。授業は私が何か情報を伝授する時間ではなく、彼らが自分の頭を自分で整理する時間だと思っているからです。彼らの成長を観察していれば、正しい材料と環境が与えられる。すると生徒たちは自分で頭の中を整理していきます。そして頭の中が整理され、自分の中から答えが出てくるようになること。それこそが子どもの成長に必要なことでしょう。