失敗していい、いつでも、何度でもやり直せる

 「今日から別の人間になる! 一生後悔しない人間になる!」と私が決断できたのは、「死にかけた」経験があることも関係しています。2歳になる直前、道を歩いていた母親と私の上に、鉄骨を積んだ三輪トラックが倒れ込んできて、その下敷きになりました。病院に駆け付けた父親は、意識のない血だらけの二人を見て、「もう助からないだろう……」と覚悟をしたくらいだといいます。

 今も右足の太ももにある大きな傷痕は、「2歳になる直前に死んでいてもおかしくなかった」証しで、物心がついた頃から「なぜこんな傷があるのか」と思うことも多々ありました。でも14歳の時に、事故は私にとって不幸な体験ではなく、貴重な体験だったと考えられるようになりました。「こうして死なずに生きているのだから、いくら失敗してもいいじゃないか。いつでも、何度でもやり直せる」と開き直ることができたのです。

 そんなふうに「すべてのマイナスをプラスに変える力」が持てたのは、親が私を絶対的に信頼し、見守ってくれたことも関係しているでしょう。が私の人生に口出しをすることなく、私自身が思うように生きてきたからこそ、養われた力なのです。

 親が子どものことで悩むのは、「自分の言いなりにしよう」と思うからです。どんな子どもも、「こういう生き物だから」と受け入れ、見守ること。それこそが、「マイナスをプラスに変える力」を育むと思います。

構成/山田真弓 イメージ写真/鈴木愛子