子どもが道を踏み外すのは、親に対する反発

 私の親は、私が「高校を辞めて、一人で勉強する」と言った時に、反対しませんでした。やがて一人で勉強をしていると、何の予定もないし、何の変化もないため煮詰まってしまい、ある日、「パチンコがしたいな」と母親のいるところでつぶやいてしまいました。さすがに「あんた、勉強するって高校辞めたんちゃうんか! あほなこと言わんとき!」と怒られると思いました。ところが母親は間髪入れずに、しかも満面の笑みを浮かべて「行っておいで!」と言ってお金をくれたんです。

 母親は、家に籠りがちな私が外に出ようとしていることを喜んでそうしてくれたのかもしれません。でも私はその時、母親に否定されなかったことがすごくうれしかった。当時はニートやひきこもりなどという言葉がない時代で、子どもは学校に行くか働くかのどちらかしか選択肢がありませんでした。その中で学校を辞めた私が朝からパチンコに行くとなれば、非常に世間体が悪かったはずです。でも母親は「うちの子はええ子や!」と本気で思っていました。その自信が何に裏付けられていたのかは分かりませんが、それだけ自分に対して信頼を持たれていたら、親を傷つけようとか、悲しませようという気持ちには全くならないものです。

 子どもが道を踏み外したり、変な方向にずれていってしまうのは、ほとんどが親に対する反発だと私は思います。親が子どもを信頼し、見張るのではなく見守る姿勢でいられれば、子どもは自らを悪くするようなことはないでしょう。