16万人の脳画像を見てきた東北大学加齢医学研究所教授、瀧靖之先生は、脳の発達と加齢を専門とする脳医学者です。瀧先生は脳が「賢さ」をどのように築き上げ、維持するのかを、膨大なデータ解析から明らかにし、これまで様々な著書を手掛けてきました。この連載では瀧先生に、子どもの能力を伸ばすために必要な「脳」の育て方について伺っていきます。第1回は「能力」を伸ばすために大切な「共感性」についてです。

共感性の高さ、低さには脳の基盤が関係している

 子育てをしていると、「どうしてだろう」と思うようなシーンは多々あります。なかでも「共感性」の違いに戸惑うシーンは多いかもしれません。

 共感性の高さ、低さは脳の基盤そのものに違いがあるという研究もあります。ですので子どもに何かを説明し、うまく伝わっていないと感じフラストレーションがたまるシーンでも、「自分の伝え方に問題があるのでは?」などと、自分にだけ要因を求める必要はありません

 共感性が低い人は、理論的に体系立てて物事を理解したり、推論したりする論理的思考能力が高いと言われています。こうした傾向のある子どもの場合、親が一生懸命、言葉で状況を説明したとしても、「それで、どうしたらいい?」という「答え」を一足飛びに求めてくることがあります。「今、丁寧に話したんだけど……」とがっかりするかもしれませんが、子どものほうには悪気がないわけです。

 とはいえ子どもの成長に合わせて、この共感性は高めていく必要があると、私は思っています。

 共感性とは、相手の喜怒哀楽などの感情を自分のことのように理解できる能力のこと。相手の気持ちを理解して適切に対応するうえで重要な能力で、社会性、コミュニケーションの発達に密接に関わり合っていると考えられます。

 先述のとおり、共感性の高さ、低さには脳の基盤が関係してきますが、この能力は伸ばしていくことができるのです。

親が一生懸命、言葉で状況を説明したとしても、子どもは「それで、どうしたらいい?」という「答え」を一足飛びに求めてくることがあります
親が一生懸命、言葉で状況を説明したとしても、子どもは「それで、どうしたらいい?」という「答え」を一足飛びに求めてくることがあります