では共感性を育むチャンスは、いつ、やってくるのでしょうか?

 子どもたちの脳のMRIを撮り、データを収集して解析した結果、脳は前から後ろに向かって発達が進むことが分かりました。

 生まれてすぐ発達するのは、脳の前のほう、極めて原始的な領域です。よく、「愛着形成」が大切、抱きしめるなどのスキンシップが大切という話を聞くかと思いますが、五感に関わるような、ぬくもりを感じる、見る、聞くといった領域のことですね。この領域の発達には、お父さんお母さんの声やぬくもりにたっぷり触れることが重要といえます。

 一方、社会性やコミュニケーション能力、想像力などの領域、「前頭前野」は後になってから発達する、ということが分かりました。

共感性を育むためには直接的な交流が必要

 脳の中で最後に発達する、思考や創造性を担う「前頭葉」は小学生以降に発達します。中でも判断したり、計画したり、コミュニケーションを取る働きのある「前頭前野」は10代以降も発達し続けると言われ、だいたい思春期ぐらいに完成します。

 では共感性は小学生以降に意識すればいいのかというと、もちろんそういうわけではありません。特に未就学のときのコミュニケーションは、リアルであることが求められます。

 今や小学生からスマートフォンを使い、SNSも駆使するようになっているケースも多々ありますが、SNSでのコミュニケーションだけでは共感性を育むトレーニングにはなりにくい。そもそもデジタル機器では相手の仕草や声色、顔色、あるいは汗をかいているといった情報が感じ取れませんよね。共感性を育むには、仕草や声色や抑揚といった、いろんな情報から相手が何を感じているかを理解するための、直接的な交流が必要になるのです。