「頭のいい子」が育つ家庭は、何が違うのか。子どもの学力や能力、才能を存分に開花させるために、親が家庭でやるべきこと、心掛けるべきことは何かを探る連載。今回は「全米最優秀女子高生」の母であるボーク重子さんインタビューの3回目として、「習い事」をテーマに語っていただきました。一人娘のスカイ・ボークさんを育てるに当たり、家庭での非認知能力育成に注力してきたボークさん(インタビュー上編参照)。習い事も、非認知能力を伸ばすための手段の一つとして取り組んだそうです。ボークさんが考える「子どもに習い事をさせる本当の意味」とは? 「何を習わせていいか分からない」「子どもが習い事に真剣に取り組まない」など、習い事に関して悩みを抱えている方は、きっと答えが見つかるはずです。

<ボーク重子さんインタビュー>
(上) 「全米最優秀女子」母 非認知能力を家庭で育む術
(中) 働く母だからこそ子に伝えられることがある
(下) ボーク重子 非認知能力伸ばす習い事との向き合い方 ←今回はココ

考えるべきは「その習い事に子どもがパッションを感じられるか」のみ

 習い事といえば、子育て中の人の大きな関心事。最近は習い事の種類もどんどん増えており、「どんな習い事を選んだらいいのか分からない」などと悩んでいる人も少なくないのではないでしょうか。

 「どうせやらせるなら、大人になってからの仕事につながるものを」などと、職業訓練の一環として習い事を考えてしまう人もいるかもしれませんが、ボーク重子さんが、子どもの習い事を選ぶ際に考えたことはたった一つ。「子どもがその習い事をすることでパッション(情熱)を持てるかどうか」でした。

 「子どもが心からのパッションを傾けられるものに出合えれば、非認知能力は必ず伸びていきます。パッションがあれば、主体性を持って行動するようになるので、どんな困難が立ちはだかっていても、努力や挑戦を続けることができる。何かに挑戦をすれば、必ず障害が起きます。それを何度も乗り越えるという経験を積むことが、回復力ややり抜く力を鍛え、自信や自己肯定感を育み、生きる力を強化することにつながっていくのです」

 娘のスカイ・ボークさんが「パッションを傾けられるもの」に出合うため、ボーク家では、数多くの習い事にトライしたそうです。基本的には短い期間で試し、続けたいものは続けるという方針で、常時二つの習い事をさせていたそう。最終的にバレエにたどり着くまでに、15以上の習い事を試したといいます。

 「テニス、水泳、スキー、器械体操、サッカー、バスケットボール、セーリング、乗馬、ピアノ、バイオリン、陶芸、ミュージカル、ボイストレーニングなどさまざまなものを試しました。短いものは1~3カ月、長いものでも半年や1年といった単位で区切りをつけ、新しい習い事にトライしてきました。

 例えばフィギュアスケートは他よりも比較的長く続けました。フィギュアスケートでは、レベルが上がってくるとジャンプを習い始めます。ある日、練習を見学していたら、娘がジャンプを怖がっているように見えました。いったんちゅうちょしてから飛ぶんです。でも恐怖心のない子は、ちゅうちょせずポーンッと飛んでいる。『恐怖心を克服させるのが親の務めだ』と思う方もいるかもしれませんが、私は、それが大好きなことでないならそこまで求めることはないと考えました。本当にやりたいことに巡り合った時は、恐怖心も自ら克服していくものです。だから本人の希望もあって3年間続けた後に辞めました」(ボークさん)。

 最終的にスカイさんが選んだのは、フィギュアスケートと同時進行で5歳から始めたバレエでした。「始めてすぐ、娘がバレエにパッションを感じていることが分かりましたし、実際、バレエに出合って以降、一度も辞めたいと言いませんでした。バレエも男性ダンサーと二人で踊るようになると、相手の腕の中に全力疾走で飛び込んでいってポーズをとったり、高く掲げられたりといろんな高度な技が入ってくるのですが、娘は『怖いけど大丈夫』と言っていました」

 バレエにパッションを傾けるようになったスカイさんは、楽しそうに練習に打ち込み、やがてプロからも声が掛かるまでの腕前になりました。興味深いのが、「他に天性の才能を発揮できる分野があったにも関わらず、そうでないバレエをあえて選んだ」という点です。

2017年、DYW(全米最優秀女子高生コンクール)の決勝で踊った時のスカイさん
2017年、DYW(全米最優秀女子高生コンクール)の決勝で踊った時のスカイさん