親から見て「上手なもの、向いているもの」が最適とは限らない

 「バレエは本来、バレエに合った骨格に生まれた人に向けてつくられているんです。娘の身体の骨格は完璧なバレエ向きではないので、理想的な骨格の人に近づくために人一倍努力しなくてはなりませんでした。でも、本人がバレエを心から好きという気持ちがあったので、努力を続けることができました。そうして所属するバレエ教室の中で、大勢いる生徒たちの中で選ばれ、主役を演じられるまでになれたのです」

バレエを習い始めたころ。初々しい表情が印象的
バレエを習い始めたころ。初々しい表情が印象的
ワシントンバレエ団の「くるみ割り人形」の舞台で蝶々の役を踊った時の一枚
ワシントンバレエ団の「くるみ割り人形」の舞台で蝶々の役を踊った時の一枚

 スカイさんはバレエを選びましたが、実はバレエよりももっと向いている競技が別にあったそうです。

 「娘は本当は競技スキーのほうが向いていて、レースチームに入るように何度も誘われました。というのも、雪国に住んでいて毎日のように滑っている男の子と競争をしても、年に1回しか滑らない娘が、全く遜色がないほどだったからです」とボークさんは振り返ります。

スキーでは天性の才能を発揮したものの、あえて人一倍の努力が必要なバレエを選んだそう
スキーでは天性の才能を発揮したものの、あえて人一倍の努力が必要なバレエを選んだそう

 多くの親は、「努力しなければ勝てないバレエより、最初から人より抜きん出ている競技スキーをやらせたほうがいい」と考えるところだと思いますが、ボークさんはそうは思わなかったそうです。

 「娘は競技スキーにそれほど興味を示さなかったためです。仮に競技スキーでオリンピック選手になれたとしても、本人は達成感を感じることはありませんし、そこに幸せはありません。習い事はあくまでパッションを育むことと人間力を育成することを目的としていたので、バレエに絞ることに迷いはありませんでした。でも娘はスキーも大好きで、今では一番の趣味の対象としています」

子どもが嫌がる習い事はやらせる意味がない

 「一度始めた習い事は、どんなに子どもが嫌がっても何とか頑張らせ、続けさせなければ根性が育たない」などと考える人も多いかもしれません。ですがボーク重子さんは、その考えとは反対だといいます。

 「人生には大変なことがたくさんあるものです。ですから、習い事くらいは純粋に楽しめ、情熱を注げるものだけにしてあげたい。パッションがあれば、多少困難があったり、伸び悩んだり怠けたくなったりした時でも乗り越えていけるはずですから。それが結果的に、社会で生きていく力を身に付けていくことにつながるんです。

 私たち大人だって、好きではない仕事を『あなたは人より上手にできるから、この仕事をやりなさい』と言われたらイヤですよね。それは子どもでも同じです」