人にはそれぞれ事情があるから、比べる必要はない

 子育てしながら仕事をしていると、つい他の人と自分とを比べてしまうことがあるもの。「例えばFacebookを見ていると、素晴らしい賞をもらったり、業績を上げたりと実績を築いている人がうらやましくなることもあります。でも、うらやましく感じるなら、見ないようにすればいいんです。

 その人にはその人の事情があり、私には私の事情がある。とりまく状況も持っているものもまったく異なる。だから、人と自分は絶対に比べない。私自身も仕事を変えるなど、行動を起こしたからこそ、こうしたことに気づくことができました。人と比べることがなくなれば、人の成功を素直に喜ぶことができますし、自分自身がすごく楽になります」。

 普段はアメリカで生活するボーク重子さんですが、定期的に日本に帰り、ライフコーチとして講演会やワークショップを行っています。

 「7月に日本で講演会を行ったときは、娘にも参加してもらいました。娘にはこれまで、悩み迷い失敗する姿もたくさん見せてきて、本当に格好悪いママなのですが、『ママがやっていることが、これだけたくさんの人に喜ばれ、役に立っている』ということを知ってもらいたいと考えたからです。娘にも多くの人の役に立つ職業に就いてほしい。私が多くの人と一緒に仕事をする姿が、その刺激になってくれたらと願っています」。

 子どもがいるからといって、子どもの世話だけで100%にならなくていい。「子どもは、親の背中を見て育ちます。パパやママ自身が精いっぱい納得のいく仕事をして、自分自身の人生を歩んでいる姿を見せることに勝る教育はないのではないでしょうか。」

 次回は、子どもの「習い事」について、ボークさんが実践してきたことと共に伺います。

(取材・文/西山美紀、写真/ボークさん提供)

ボーク重子さん
ボーク重子さん ICF認定ライフコーチ、アートコンサルタント。福島県出身。米・ワシントンDC在住。30歳の誕生日前に渡英、ロンドンにある美術系大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学。現代美術史の修士号を取得後、フランス語の勉強のために訪れた南仏の語学学校で、米国人である現在の夫と出会う。1998年渡米、出産。子育てと並行して自身のキャリアも積み上げ、2004年に念願のアジア現代アートギャラリーをオープン。2006年にワシントニアン誌上でオバマ前大統領(当時は上院議員)と共に「ワシントンの美しい25人」の一人として紹介される。また、一人娘スカイは2017年「全米最優秀女子高生」コンテストで優勝。現在は全米・日本各地で子育て、キャリア構築、ワークライフバランスについての講演会やワークショップを展開中。著書に『心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育「非認知能力」の育て方』(小学館)、『「全米最優秀女子高生」を育てた教育法 世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)等。