仕事でうまくいかないときこそ、子どもにも共有

 「仕事でうまくいかなかったときこそ、家族と共有するよう意識しました。失敗しても必ず何とかなることを目の当たりにして、失敗を恐れない子どもになってほしいという願いがあったからです。子どもにはうまくいっている姿ではなく、そうした試行錯誤のプロセスを見せることこそ大切だと考えました

 例えば、ギャラリ―の仕事を始めたばかりの頃は、誰にも相手にされず、ワシントンポストに記事を載せてもらいたいと何度アプローチしても門前払いでした。その時に、『どこを変えたらいいかな』と、娘に相談したところ、『書類が素人っぽい。きれいじゃない』と言われて、みんなが読みたくなるような仕掛けを色々考えてくれました。当時、娘は小学校高学年くらいでしたが、大人顔負けの色々なアイデアが出てきて驚きました」

 子どもの視野を広げるため、自分が仕事をしている姿をできるだけ子どもに見せることも心がけたといいます。

 「コンサルティングの仕事では、ほしい作品が見つからなくて困っていたお客様に、私が代わりになるものを探して提案をしたりするとものすごく喜ばれたりするんです。このように仕事には誰かの役に立つという喜びがあることを知ってほしくて、よく娘を仕事場にも連れていきました

仕事と子育て両立のため、自分への期待値を下げる

 子育てをしていると、十二分に仕事をする時間が取れないことも多いもの。ボークさんも、仕事に100%の時間を注げないことにジレンマを感じていたといいます。

 「子どもが生まれたら、仕事をする自分、妻、ママと役割が増えます。でも時間は3倍にはならず、同じ24時間のまま。かといって頑張りすぎるとうまくいきませんから、自分に対する期待値を下げることが大事だと気づきました。“幸せに妥協する”んです。

 例えば、同じ仕事をしている人が、たったの3年で成功にもっていけたことも、子育て中の私は10年かかったりします。でも、今、自分にとって大切なものは仕事だけでなく、夫であり、娘なんです。妻であり、母であることを選んだのは私自身ですし、子育てはたったの18年間しかできません。自分を納得させるのに時間が少しかかりましたが、最終的に、このバランスでいいんだと思えるようになりました。

 そう気づいてから、ギャラリーの規模拡大を目指すのではなく、数少ないお客さんと濃いお付き合いをしていくことに決めました。そして娘が巣立っていった今、ワークライフバランスやキャリア構築、子育ての方法などを模索している方のために、自分自身の経験を踏まえてコーチングと執筆活動を行っていきたいと思っています。コンサルティングやライフコーチの仕事にシフトしていったのはこうした理由です」