規模の大きな会社で責任ある仕事に就きたい

 簿記取得後、そのまま税理士事務所で仕事をしてもよかったのですが、自転車で通える距離の個人事務所で働くより、大勢の人と関わりたい、できればおしゃれをして電車通勤をしたいという気持ちもあって、さらに転職をすることに。派遣会社に登録し、今は麹町にある大手食品会社で事務職に就いています。

 当然、本当は正社員で仕事を探したかったのですが、名のある企業は経験者でも転職が難しい。その点、派遣社員としてであれば、ある程度規模の大きな会社で経験が積めると考えたんです。

 ただ派遣は期限があるので、不安はあります。ブライダルで10年勤めて、待遇面でも仕事のやりがいの面でも、一つの場所で長く勤めるほうが自分に合っていると分かっています。子どもがいて時短勤務でとなると、今後のキャリアアップは簡単ではありませんが、いずれは正社員として責任ある仕事に就くことが今の目標です。

ブライダルに戻れるのかは疑問

 とはいえ本音を言えば、接客業に戻りたいという気持ちはあるんですね。

 学校行事など子どもの用事が土日に入ってしまいますし、中学受験などを考えると、そう簡単には戻れないと思っています。

 数カ月前に、ブライダルの会社から子どもが小学生になったら、少しでもいいので戻ってこないかと声を掛けてもらいました。即戦力としてあてにされている面はあると思います。でも私は、ブライダルで仕事をするなら徹底的にやりたいんですね。パートで結婚式の仕事をちょっとお手伝いするのではなく、担当を持って、自分のお客様をご相談の最初から当日の送り出しまで見ていきたい。それくらいこだわりを持って仕事をしていましたから。

 それなら10年後、子どもの手が離れたらどうかというと、ブライダルは、自分が年齢を重ねてお客様の年齢と離れることで、寄り添うことができなくなるのではないか思ってしまう。年齢的に立ちっぱなしの仕事で、重いドレスを持って走り回るということが、体力的に可能なのか。40代半ばになって、20歳くらい歳が違うお客様の接客ができるのかどうか。そのときに、接客業に戻りたいと思っているかどうか。

 そんなことを模索しながら、今の立場、仕事で経験を重ねて、枝葉を広げていこうと思っています。事務職でもブライダルでも、自分で選べる立場になりたい。

 私の転職は、探り探りで進んできています。結婚も出産も早かったので、もっとキャリアを積んでいれば、もっと違う道が選べたかもしれない。もっと色々できたかもしれない。少し、周りをうらやましく思うこともあります。

 でも最近ようやく、次のステージが見えてきたかなと思います。

(取材・文/日経DUAL編集部 山田真弓 イメージ写真/鈴木愛子)