日経DUALと日本経済新聞社は、「自治体の子育て支援に関する調査」を共同で実施しました。その結果をもとに「子育てしながら働きやすい都市」をDUAL・新聞独自の指標でランキングしました。

 2017年度の総合1位に輝いたのは、東京都豊島区。前回は、衝撃の「消滅可能性都市」のリストアップからの起死回生の道のりについて、高野之夫(ゆきお)区長に聞きました。下編となる今回は、認可保育所新設の秘訣や学童保育対策、その他の子育て支援について語ってもらいました。

【共働き子育てしやすい街ランキング特集】
第1回 共働き子育てしやすい街2017 総合ランキング
第2回 自治体調査 待機児童ゼロ、達成可能は5割どまり
第3回 共働き子育てしやすい街2017 上位50自治体は
第4回 共働き子育てしやすい街 全国編詳細リポート
第5回 豊島区長 “区が消えてしまう”ショックからの復活
第6回 豊島区長 豊島区の子どもたちは、私たちが守る ←今回はココ!
第7回 松戸市長 惜しみない子育て支援は将来への投資
第8回 松戸市長 子どもは社会全体で育てる責務がある
関連 「共働き子育てしやすい企業&街2017」表彰式
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信頼できる事業者には定期的に手紙

高野之夫豊島区長
高野之夫豊島区長

日経DUAL編集部(以下、――) 区長が特に力を入れてきた待機児童対策ですが、認可保育所を順調に増やすことができた一番の理由は何だと思いますか。

高野之夫区長(以下、敬称略) 担当部署の職員が本当に頑張ってくれたと思います。私がガンガン発破をかけたので、大変だったと思いますが(苦笑)。

 具体的に言うと、保育所を運営する民間の事業者と信頼関係を構築して、「せっかく豊島区に保育所を作るなら、もう1カ所作りませんか?」と定期的にお誘いをしています。また、豊島区以外で既に認可保育所を運営している事業者にも定期的にお手紙を出して、「うちでやりませんか?」と働きかけています。現場も待機児童ゼロに対して強い思いを持っているので、一生懸命セールスをしてくれているんです。

 同時に、誘致に当たっては保育サービスのクオリティーが高く、経営がしっかりしている法人であることを大前提にしています。

―― サービスの質という部分は、どうやってチェックしているのですか。

高野 既に全国のどこかで認可保育所をやっていることを条件に声をかけていますので、それ自体がある程度基準を満たしている、信頼できる事業者ということになります。そのうえで、事業者が実際に運営する保育所へ、区の職員がベテランの保育士と一緒に視察に赴いています。現場でチェックするポイントは色々あるのですが、子どもたちがニコニコ笑顔で寄ってくるところはまず大丈夫と考えています。ちなみに遠方の場合も関係各所に電話で問い合わせるなどして、必ず情報を得るようにしています。

―― 保育所の新設に当たっては、保育士の確保が大きな課題という自治体は多いですが、豊島区ではそのあたりいかがですか。

高野 幸いなことに、今のところ保育士が足りずに開所できなかった例はありません。というのも、誘致の対象としているのが実績のある事業者ばかりですので、事業規模も比較的大きく、保育士をしっかり確保できているからです。中には、毎週東北や九州へバスツアーを組むなどして、全国で保育士を採用できるノウハウやシステムを持っているところもあります。

 区の試みとしては、区内にある私立の保育施設からの求人情報を冊子にまとめ、今年11月に都内の保育士養成学校185校に送付しました。区がまとめ役になっているという信頼感も手伝ってか、各施設に問い合わせが入りつつあるようです。

<次のページからの内容>
●保育の事業者には賃料を補助
●すべての公立小学校の校内に学童を設置
●妊娠初期から学齢まで、切れ目のない支援を
●児童相談所を区に移管し、2022年に新設予定