保育の事業者には賃料を補助

―― 区として保育士に対する独自の補助は行っていますか。

高野 保育士への家賃補助は他の区と同様に、当然やっていますが、給料への上乗せは行わない方針です。規模の大きな事業者の場合、各地に保育所を持っていますので、あまり補助を出すと同じ事業者の中でも保育所ごとに給料の差が大きくなってしまいます。実際、それをするとやりにくいという事業者からの声も耳にしますし、効果がはっきりしない部分もあります。

 自治体同士の補助金の上乗せ合戦や保育士の取り合いといったことは、やり過ぎると問題の本質からそれてしまいます。豊島区としては、住まいの手当てなどを十分に行い、あとは都道府県のレベルでの補助をフル活用する程度にとどめています。

 ちなみに保育所を誘致するに当たっては、事業者が賃貸で場所を確保する際の賃料への補助は、当初から重視しています。特に私たちが保育所を作ってほしいと考えている池袋駅周辺は、賃料が高くて採算が合わないという話が多々ありました。そのため、この地域は昨年からさらに金額を上乗せするようにしています。これも、必要な数の保育所確保に貢献できているのではと考えています。

―― その他に、子育て支援について力を入れていることを教えてください。

高野 学童保育については「子どもスキップ」という名称で、昨年までにすべての公立小学校内に設置しました。高学年についても、全22施設で60人程度を受け入れています。

―― 小学校の校内に学童を設置する場合、学校と学童の管轄の違いから、運営が難しい面もあると言われますが。

高野 今年度から、学童を教育委員会の所管にしました。学校と同じ所管になったことで、教室の利用や設備の改修など、非常にスムーズに進むようになりました。

 また、もともと豊島区は20~30年も前から児童館に力を入れていて、各学区に作られた児童館が学童の機能も担っていました。その後、区が財政危機に直面したこともあり、児童館や数多くあった老人施設の統廃合を進め、学童は学校内へ移管することになった経緯があります。それを、現在は老人向け、児童向けといった年齢別にすることをやめて「地域区民ひろば」という形にしました。区民の誰もが利用できる、コミュニティーづくりの場になることが狙いです。

 ここで始まった「子育てひろば」は、保育園にも幼稚園にも行っていないお子さんとその保護者が利用できます。今は7割くらいの子どもが保育所や幼稚園など何らかの施設に入っていますが、家庭のみで子育てをしているケースもまだ3割くらいあります。都会では孤立した子育てになりがちなので、もっと力を入れていきたい部分ですね。