茂木健一郎さんに、脳科学の観点から最新の子育て論を伺うミニ連載。最終回はデジタルネーティブの子どもたちに焦点を当て、お話を伺います。今やデジタルの世界については、子どもたちのほうが親よりはるか先を行っている時代です。親がそれを認識していないと、誤った対応で子どもの地頭の伸びしろを小さくしてしまう可能性があると茂木さんは言います。デジタル時代の親はどうあるべきなのか、お聞きしてみましょう。

一つのことに秀でた“おたく”がビッグチャンスをつかむ時代

 こんにちは。脳科学者の茂木健一郎です。

 ここ10年の間で、ゲームおたくやコンピューターおたくの地位がかなり変わってきています。

 Facebookの創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、ハーバード大学在籍中の2004年に数人の友人と共にFacebookの前身を立ち上げました。

 当時は、どちらかというとビジネス志向の人の地位が高く、専門分野に詳しいいわゆる“おたく”は使われる側だった時代です。

 ちょうど日本がバブルに沸いていた1980年代もそうでした。当時、僕は東京大学で物理学を学んでいましたが、同じ東大でも法学部の連中によく言われたものです。

 「社会に出たらコミュニケーション能力に長けた俺たち文系の人間が、おまえみたいな理系を顎で使うんだ」と(笑)。確かに当時はそういう雰囲気があったのです。

 ザッカーバーグ氏が在籍していた当時のハーバード大でも、似たようなことがあったのでしょう。彼はFacebookを創業する際、それが嫌で、ビジネス志向の人を追い出したといいます。まさにコンピューターおたくの逆襲です。

 そして今はどうでしょう。ビットコインや仮想通貨を作ることができる技術を持っていたら、巨万の富を築けるチャンスがあります。つまり、数学や物理が得意だけれど、コミュニケーションが苦手というおたくタイプの子には、より幸せになれる環境がそろったということ。「周りの誰よりもコンピューターに詳しい」など、一つのことに秀でたおたくがビッグチャンスをつかめる時代がやってきたのです

 「子どもがパソコンで遊んでばかりいる」と言って心配するお父さん、お母さんがいますが、嘆いているなんてナンセンス極まりない。それこそ将来有望な子ということになります。