お出掛けしたり、おうちで遊んだりと親子で楽しむ時間を子どもの学びにつなげるためには、親は子どもとどのように関わったらいいのでしょうか。DUAL世代の皆さんの工夫を紹介している本シリーズ。今回ご登場いただくのは、東京都で8歳(小2)の女の子を育てている会社員(システム管理)のYさん(44歳)。大事にしているのは、わが子をよく観察し、興味を尊重すること。「親が自分の価値観を押し付けないため」に、日常生活に取り入れている工夫についても聞きました。

実践例:Yさんの場合(8歳の娘を育て中のママ)

 Yさんが子育てで大事にしているのは、子どもの興味を尊重し、深めていくことのサポートだそう。背景にあったのは「娘の気持ちが分からなかった」という経験。

 「幼い頃から娘は私とは性格も興味の対象も全く異なりました。幼少期の私は、人形遊びや物語絵本が好きなタイプでした。これに対し、娘は昆虫やロボットが好きで、物語絵本よりも、図鑑などを好むタイプです。さらに遊び方も、私は友達と共感しながら一緒に仲良く遊ぶ心地よさを味わう、協調性重視派なのに対し、娘はマイペース。友達と一緒にいても一人だけ違うことをして遊んでいるということが、よくありました。

 夫は『自分によく似ている』とか『そんな気持ちも分かるなあ』と言うのですが、私には娘の気持ちが分からなくて……」

 娘の気持ちが分からないとモヤモヤしていたYさんですが、母親としての役割が、娘の幼稚園時代のある出来事によって明確になったそう。

 「休日に仲良しの友達と公園に行きました。娘が友達と遊ばず一人で遊んでいたので、『お友達と一緒に遊ばないの?』と声をかけると、娘から『私は一人で遊ぶのが楽しいから、ママはそういうこと言わないでいいよ』ときっぱり言われたのです。

 この一言で、娘は自分がやりたい遊びを自分で選んでいることと、自分とは全然違う子なのだから親である自分の価値観や興味を押し付けるのではなく、娘の興味についていけばいいということに気づき、ストンと納得できたのです」

 以来、子どもの興味を尊重し、深めるためのサポートに徹しているというYさん。

 「成長し将来について考えるときに、自分で歩むべき道を選び、それに向けて頑張っていける子になってほしいです。だからこそ、今の時期に好きなことをしっかり楽しみ、好奇心の芽を育てたいと思っています。まさに今は、心の畑に興味や好奇心の種をまき、大きく育てている時期という感じですね」。こうした考えのもと、娘の興味を大事にしてきた結果、娘はイモムシの細かい種類を見分けて親を驚かせるほどの昆虫好きに。幼稚園では「虫博士」と呼ばれることもあったと言います。

 次のページから、Yさんが、「自分とは違う」子どもの興味をどのようにサポートし、マイペースな娘と気持ちよく過ごすために日々の暮らしの中どのような工夫をしているのか、具体的に紹介していきます。

Yさんの家で飼っているアゲハの幼虫と先に羽化したさなぎの抜け殻
Yさんの家で飼っているアゲハの幼虫と先に羽化したさなぎの抜け殻