ゾロリが読書のきっかけに。全巻読破の幼児も!

―― ゾロリは面白い話ばかりなので、本を読むきっかけになったという子どもが多いと思います。

 まず本の楽しさを教えてもらえないと、子どもは本を読む気にはならないですよね。「ゲームやアニメ、漫画といった楽しいことがいっぱいあるのに、なんで本を読まなきゃいけないの?」と思う子が多いはずです。でも、本の面白さを知ると楽しむことの幅が広がるし、本にはページをめくるというほかにはない楽しさがある。それを知ってほしいんです。

 私は、自分が本が嫌いになった時期があって、そのときは「本ってなんて面倒くさいんだろう」と感じていました。アニメは目を開いていれば勝手にストーリーが流れていくけれど、本は自力で読まなければいけない。最初に難しい本を無理やり読まされて、読書感想文を書かされたりしたら、本が嫌いになってしまうかもしれないけど、一度楽しい本に出合えたら、たくさん本を読みたくなると思います。「次のページには何があるんだろう」という、ページをめくる楽しさを知れば、本好きになるんじゃないかな。ですから私は、「すると」とか「そして」とか「ところが」という言葉でページが終わるようにして、ページをめくりたくなる工夫をこらした本を書こうと思いました。そうやって一冊読み終えるという達成感を味わうと、次の本に手が伸びるんですよね。

―― ゾロリをきっかけに本好きになった子はたくさんいますよね。

 私のサイン会には、子どものころゾロリを読んでいた二十歳くらいの子も来てくれます。その子は今は大学の文学部に通っていて「最近は三島由紀夫を読んでいます。読書体験はゾロリからでした」と言うんです。また、5、6歳の幼児さんで、「ゾロリを全巻読破した」という子もいるんですよ。60冊以上もあるのに! 子どもって、好きになってくれたらどんどん読んでくれるんです。将棋の藤井聡太君もそうだけど、好きなことを見つけたら徹底的に極めて、プロになっていきますよね。子どもの能力はすごいと思います。

―― 子どもはゾロリのストーリーから学ぶことも多いと思います。私は親になってからゾロリのファンになったのですが、親としても楽しみながら学べます。

 ゾロリは子どものころ、甘えん坊でした。ゾロリという物語を俯瞰で見ると、自立の話なのかなと。最近のお母さんは、子どもに何でもやってあげちゃうところがありますよね。でも私は、子どもには失敗させて学ばせてあげないといけないと思います。ゾロリは父と離れ、母を亡くし、一人でやっていかなくてはいけなくなったけれど、子どもたちもみんないつかは自立しないといけないから、羽ばたき方を教えてあげなければならないですよね。『かいけつゾロリのてんごくとじごく』(2002年発売)には、そういった話を親に向けて書きました。