歯並びをきれいに整える、というと歯に装置をつける「歯列矯正治療」を連想する人も多いでしょう。でも、子どもが小さいうちは歯も、歯の土台となる骨も日々成長するため、必ずしも矯正装置を使った治療だけが、歯並びを変える方法ではありません。実際に歯列矯正が必要となるのはいつからなのか、どんな方法があるのか、倉治ななえ先生が答えてくれました。大田区の歯科医院で子どもたちの歯の成長を、30年にわたって見守り続けてきた倉治先生は、「歯列矯正治療の前に、そして並行して、家庭でできることはたくさんあります」と教えてくれました。

実際に矯正装置を使って治療する場合のスケジュールって?

 子ども時代の歯列矯正の治療は、乳歯だけの「乳歯列期」や乳歯と永久歯が混じりあった「混合歯列期」に行う「早期治療」と、生えそろった永久歯すべてに矯正装置をつけて歯を動かす「本格治療」があります。

 早く治療を始めれば、すべて解決するというわけではないのが、子どもの歯並びです。成長・発育のまっただなかにいる子どもの体は、とても柔軟で、まるで粘土のように変わります。歯も、歯並びの土台となるアゴの骨も成長し続けています。アゴを育てるだけでなく、指しゃぶりなどの悪いくせをとり除いたり、唇や舌を正しく使うトレーニングによっても、顔つきまで変わるほど歯並びが変わることが期待できます。

 子どもの歯並びが気になった時、「永久歯が生えてから矯正するしか手立てはないのでは」と考えたり、あるいは逆に「骨格が柔軟なうちに矯正装置で治療しなくては」と考えてしまいがちかもしれませんが、とにかくまずは早めに歯科医に相談することをお勧めします。子ども時代の歯並びの早期治療は、成長・発育する力を引き出して、骨格や歯並び・噛み合わせを改善するだけでなく、口の正しい機能を取り戻していくといったメリットがあります。また早期治療を行うことで、本格治療がやりやすくなったり、効果的に行えることもあるのです。いっぽう矯正治療を行わず、家庭で守るべき生活習慣(下記「歯並びは生活習慣でも変えられる」参照)を指導してもらいながら、観察することもあるでしょう。いずれにしても矯正治療に関しては、相談は早めに、治療は十分に話し合って納得が得られてから適切な時期に開始することが大切です。