落ち着きがなくて、衝動的で、感情の起伏が激しくて、忘れ物も無くし物も多くて、空気が読めなくて、人の話を聞かずに自分の言いたいことばかり話し、注意されたそばから同じ失敗を繰り返す……、そんなお子さんが身近にいませんか? 教育コンサルタントの松永暢史さんは、そんな「ADHDタイプ」の子を「ズバ抜けた問題児」と命名し、そのズバ抜けた能力をどんどん伸ばしていくことを提案しています。下編の今回は、自らも「ADHDタイプ」と話す松永暢史さんだからこそ思いつくユニークな学習法を紹介しましょう。実はこれ、すべての子たちに有効な勉強法のようです。

(上) 松永暢史 AI時代を生き抜くのはADHD的個性だ
(下) ADHDタイプだった僕を伸ばした魔法の言葉 ←今回はココ

親が伝えるべきなのは、「がまん」ではなく「勉強の面白さ」だ!

 ADHDタイプの子は、遅咲きです。小学生時代は特に、成績がよくない子も多いものです。私もそうでした。通知表には3や2ばかり。

 でも、私は自分の成績が悪いことを、全く気にしていなかったのです。不思議なほど、コンプレックスがありませんでした。それは、母の影響です。

 母はいつも「ノブちゃんは早生まれだからしょうがない。あなたは頭がいいからすぐできるようになる」と言いました。私は素直にそれを信じ、運動が苦手で、漢字が覚えられなくて、授業中によそ見ばかりして、習い事が続かなくても、全部「早生まれのせい」と思っていたのです。母が私にかけてくれた魔法です

 50代になり、自分がADHDタイプだと気づいたとき、母への感謝の念が湧き上がりました。早速母に電話して「早生まれだからしょうがないって言ってくれてありがとう」と伝えたのです。すると母はこう言いました。

 「本気でそう思っていた。あんたは頭がいいからね」と。

 驚くべき親バカっぷり! 赤面モノですが、これこそが発達の遅い子に自信を失わせないために親ができる最善のことだと確信しました

 最悪なのは、「自分は普通の子が簡単にできることもできないバカだ」と思い込ませてしまうことです

 ADHDタイプの子のもつ「ズバ抜けた能力」は、遅咲きの花です。あまり早いうちに勝負をかけず、そのときに興味のあること、できることをやらせて伸ばしていってほしい。それが教育の大前提です。そのあたりは「大器晩成型の子は、勝負どころを高校受験に!」に書いていますので、そちらをご参照ください。

 晩成型の子の場合、本気で勉強を始めるのは14歳、中学2年生ごろからでも大丈夫です。その前はたっぷり遊ばせ、興味の幅を広げておきましょう。

 では、何もせずにのんびり発達を待てばいいのか?というと、そうではありません。ADHDタイプに限らず、子ども時代でなければ身に付けられない学力の基礎というものがあります

 「ここだけは外せない」という基礎力の一つ、それが暗算力です。