落ち着きがなくて、衝動的で、感情の起伏が激しくて、忘れ物も無くし物も多くて、空気が読めなくて、人の話を聞かずに自分の言いたいことばかり話し、注意されたそばから同じ失敗を繰り返す……そんなお子さん、身近にいませんか? 「もしかしてADHD?」と心配になることもあるかもしれません。でも、そういう子たちには「一般人」にはない、非常に高い能力があると強調するのが教育コンサルタントの松永暢史さんです。松永さん自身、子ども時代はそんなタイプの一人だったとか。だからこそ語れる「教室での問題児」の特性とその伸ばし方を2回に分けて紹介します。上編の今回は、ADHDタイプの子が「勉強嫌い」になってしまう理由とAI時代に向けての可能性についてです。
(上)松永暢史 AI時代を生き抜くのはADHD的個性だ ←今回はココ
(下) ADHDタイプだった僕を伸ばした魔法の言葉
「え? オレってADHDかも?」 50歳を過ぎて初めて知った衝撃
「うちの子、ADHDっぽいんです」「発達障害ではないでしょうか」
子どもの教育相談をしている中で、そういう言葉が増えてきたのはここ10年くらいのことです。ADHDとは「注意欠如/多動性障害」のことで、発達障害の一つです。「教育に携わる人間として、正しい知識を持ったほうがいい」と思いたち、いくつかの本を読んでみました。勉強のつもりだったのです。ところが……。
読めば読むほど、実感しました。「これは、私のことじゃないか!」
私は発達の専門家ではありませんし、医師から診断を受けたわけでもありません。でも、私にはADHDの特性がピタリと当てはまると感じたのです。それは以下のようなものです。
2 多動 状況とは無関係に体を動かしたり、相手かまわず一方的に話し続けたりする特性がある。本人の意志ではなく、脳の働きによって自然に動いてしまうため、ごく短い時間でも静かにしていることが難しい。
3 衝動性 「欲しい」「したい」という欲求が強く激しく出て、衝動的に動いてしまう。たとえるなら、アクセルの反応が早くて強力であるにもかかわらず、ブレーキがとても弱い車のよう。喜怒哀楽などの感情表現も、抑えることなく表す傾向がある。
出典:『発達障害の子どもの心がわかる本』(主婦の友社)
衝撃を受けました。心が、大変なことになりました。
自らの過去が津波のように押し寄せ、私を揺さぶり、そして理解したのです。子ども時代から感じていた違和感の理由を。あきれるほどの不器用さの裏にあるものを。無自覚に家族にかけてきた迷惑の数々を。そしてなぜ自分が今独自の発想で本が書け、教育コンサルタントとして生きていられるのかも……。
私の存在は、「ADHDタイプ」という土台の上にあるのだと実感したのです。(ADHDかどうかを医学的に診断する基準は明確にあるのですが、私は専門家ではないので控えさせていただきます。その代わり「ADHDタイプ」と書かせていただきます)
このショックを長年連れ添った妻に話してみたところ、彼女は「私は昔から気づいていた」と言うではありませんか。しかも私から受けた「被害」の数々を切々と訴えられ、申し訳ないやら情けないやら……。
あまりにショックが大きかったので、頭の中を整理するために『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方』なんて本まで一冊書き上げてしまいました(笑)。それほど大きな発見だったのです。
でも、この本をまとめながら、気がつきました。「人と違う」ということは人生における武器であり、かけがえのない魅力なのだ、と。