集中すればするほど、次々にひらめくという才能がある
私の教室を訪れる子にも、ADHDタイプの子は少なくありません。学校では「問題児」扱いされてしまい、勉強にも興味がもてず、成績がどんどん下がってしまう子たちです。
しかし彼らは、打てば響く子でもあります。ユニークな学習方法を取り入れ「面白い!」と思わせることさえできれば、その教科や分野にのめりこみ、能力をグングン伸ばしていくのです。その姿は見ていて本当にオモロイし、人をワクワクさせます。
特に輝くのは、何か好きなことをするときです。このとき、彼らはとんでもない集中力を発揮します。周囲の物音など耳に入りません。そして驚くべきものを作りあげるのです。
そして集中すればするほど、頭の中に「もっといいアイデア」が浮かぶという特徴もあります。集中して何かをやっていると思ったら、片づけもせずに別のことをやっているのはそのせいです。人の話を最後まで聞けず、遮って話し始めるのも同じことです。相手の話に刺激を受けて、次々と話したいネタが浮かんでしまい、抑えきれないのです。
そう、頭の中のひらめきが止まらないのです。
以前、ある大企業の社長と話をしたとき、彼はこんなことを言っていました。
「会議で新しいアイデアを出せるのは、だいたい40~50人に1人くらいなんだよ」
なるほど、と思いました。アイデアがひらめく人間というのは、実はあまり多くないと私も気づいていました。
アイデアの種は誰でも1粒もっていて、一生に一度花が咲く……なんてものではありません。「これをこうしてああして、そうやってみて、あーそうか、ひらめいた!」っていう試行錯誤の癖がついている人間の中だけに生まれるもので、そういう人間はあらゆるところで、あらゆるテーマでひらめきを発揮するのです。
そしてその「ひらめき担当」こそが、ADHDタイプの子の目指すべき場所の一つなのだと思います。
オレたちは、AIに仕事を奪われることなどないのだ!
歴史上の偉人の多くの人には、発達障害的な傾向があるという説があります。今の診断基準に照らし合わせれば、モーツァルトもベートーベンも、ニュートンもアインシュタインも私たちADHDタイプのお仲間です。ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブズもそう。ADHD的、自閉スペクトラム症的なズバ抜けた個性によって、時代を変えた人たちです。
「発達障害があるからといって、みんなが天才とは限らない」というのも、確かにその通りかもしれません。なぜだと思いますか? 多くの場合、能力が開花するまえに「変わった子」「ダメな子」「普通のこともできない子」として潰されてしまうからです。
ADHDタイプの子は発達が遅いので、子どものころはマイナス面ばかりが目立ちます。子どもに「普通」を期待する大人たちのしつけや叱咤激励によって、彼らは自信を奪われ「自分はバカだ」「ダメな人間だ」と思い込むのです。これが現代の日本にまん延している、まちがった教育です。
一方で、幼いころにその特別な力に気づいてもらい、それを曲げずに伸ばしてもらえる幸福なADHDタイプもいます。ADHDタイプは素直で明るく、元気な子が多いので、彼らはちょっと変わった部分もあるけれど魅力的です。
そして将来社会では、「ひらめく人」「問題点に気づいて指摘できる人」「リスクを恐れず変革の道を選ぶ人」「時代の先端を突き進む人」になれるに違いないのです。
特にこれからは、ADHDタイプが特に求められる時代になると私は確信しています。AI(人工知能)の発達により、多くの「一般人」は今後、職を奪われていくはずです。言われたことを言われた通りにやるだけなら、AIのほうがよっぽど便利ですからね。
しかし、ADHDタイプの発想や行動力は人間ならではのものです。しかも、素直に育ったADHDタイプは、元気いっぱいで明るく、職場にエネルギーを与える存在になるはずです。社会が求めないはずがありません。
そんな彼らの高い能力を伸ばすための勉強法は、次回詳しくお伝えしましょう。
(取材・文・構成/神 素子 撮影/花井智子)