なぜ合宿でかくも大量のおにぎりを握るのか?

 おにぎりには、フライパンで焼いたシャケと、佃煮化した昆布を入れて作るもので、塩はベトナム産の「カンホアの塩」というのを使っている。

 男たちのごつい手で、しかも早くすませようとして握るので、必然的に一つ一つのおにぎりは大きくなり、テニスと野球の球の中間ぐらいの大きさになる。コンビニのおにぎりの2倍以上。しかもぎっしり握ってあるので堅く、思いっきり投げても空中分解しないはずである。

 これがあっという間に生徒たちの腹に消える。10合の米を研いでは炊き、大量のおにぎりを握るのだが、ひとつ残らず蒸発してしまう。

 「どうしておにぎりなんですか?」と、教師の1人に尋ねられた。

 この合宿の目的は、テレビ、マンガ、スマホ、ゲームといった暇つぶし機器から子どもを切り離し、スーパー・ハイソニック・サウンドに包まれた自然環境の中で自己学習させ、早寝早起きのメリハリのある生活習慣の大切さを教えることである

 さらにその中で、意識の持ち様によっては学習が単なるワーキングを越え、自分の能力開発につながるものであることを伝達するためである。

 問題は、それでも子どもたちは気が散るか、机から逃れようとすることである。

 その第一の言い訳は(1)「トイレに行きたい」、次が(2)「のどが渇いた」、そして(3)「腹が減った」である。(1)は行ってもらうしかないが、その間に別のことをしないので、割とすぐにもとのアタマに戻れる。(2)もあまり問題ないし、3時間くらいならのどが渇かないこともある。飲みたければ冷蔵庫の麦茶を飲めば良い。

 しかし、(3)は困る。家だと食べ物を探したり、コンビニへ買いに行ったり、お菓子を食べてくつろいだりするうちに、別のアタマになる、つまり「気分転換」することになってしまうのだ。

 観察したところ、食後3時間は「腹が減った」とは言わない。だが、成長期の子どもの腹は恐ろしく、3時間を過ぎるともうダメだ。口に出さなくても「腹減った」と思い続けることになり集中できなくなる。だから「腹が減った」と思わせないために、3時間ごとにおにぎりを出すのである。

 朝5時過ぎに朝食。5時半から学習。9時におにぎり。12時昼食。15時おにぎり。18時夕食。3時間おきに約5食とる。これで「腹減った」と言うことが無意味化するのだ。

オトコのおにぎりは、ぎっしり握らねばならん!

 ご家庭でも、ぜひこの考えを参考にしてほしい。

 ただし、子どもたちはよくこう話す。「お母さんのおにぎりはべちょべちょして柔らかい」「柔らかく握ってあるのでボロボロ崩れる。コンビニのやつと同じ」

 つまり、女の人のおにぎりもコンビニのおにぎりも柔らかすぎて迫力がないと言うのである。男の子たちのおにぎりは柔らかすぎてはならない。ぎっしり握ってやることが大切である。また、好みの具材も各人なかなかうるさく、子どもに好みをよく聞いたうえで決めることが大切である。

 米を炊いて作ればコンビニで買うよりはるかに安く、やや金額を上乗せすれば、より良いお米を買うことができる。彼らはそこに母親の愛情を感じるようである。

 塩はこれまた上質の天塩を用い、手にジョリジョリするぐらいたくさんつける。海苔は巻かず、すぐ使えるように袋入りの海苔をそばに置く。

 おにぎりを2個握るのは3分もかからない。朝ご飯の残りを軽く握っておくだけ。ラップして机の上に置いておけばよい。これで子どもの「腹減ったー」は解消される。余計な添加物の入ったお菓子を食べる必要もない。働く女性にはこれをお勧めする。

 誰が作っているのかわからないコンビニのおにぎりでは、お腹は満たすことはできても、愛情は味わえない。お金もかかる。お母さん自身のお弁当もおにぎりにする手もある。それは柔らかくそっと握ったもので良いが。

スマホ、ゲームといったデジタル機器から切り離され、自然に囲まれた世界で5泊6日を過ごすのがこの合宿の目的だった
スマホ、ゲームといったデジタル機器から切り離され、自然に囲まれた世界で5泊6日を過ごすのがこの合宿の目的だった