教育社会学者の舞田先生が統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。今回のテーマは学業成績と非行です。学歴社会を通り抜けてきたDUAL世代ですが、社会人となった今になってみると「学生時代の成績が良かった人が必ずしも仕事ができるわけではない」という実感を持つことも多いですね。では、平成時代も終わりが近づく現代の少年たちの価値観はどうなっているのでしょうか。やはり学歴重視? それとも成績の呪縛から解放されているのでしょうか? 舞田先生が鋭く分析します。 コラムの終盤では今あるべき親の姿についても述べられています。ぜひじっくりお読みください。

非行に走る原因として学業成績に注目してみよう

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。今回は、少年非行のお話です。非行とは、未成年者による法の侵犯行為ですが、それが起きる過程は3つに区分することができます。

 (1)生活態度が不安定化する過程、(2)非行を誘発しそうな環境に遭遇する過程、(3)行為が非行として警察に認知される過程、です。少年を非行に押しやる過程(push)、非行に引き込む過程(pull)、行為が事件化する過程(recognize)、と言い換えてもよいでしょう。私は学生のころ、「プッシュ、プル、リコグナイズ」と口ずさんで覚えました。

 ここで焦点を当てるのは、(1)のプッシュ過程です。思春期にもなれば、子どもの心は激動を繰り返し、いつだって不安定なものですが、その浮動を規定する要因は何でしょう。答えは無数にありますが、私が注目するのは学業成績です。

 「成績不振→非行」という因果経路は、誰もがピンとくるでしょう。学歴社会のわが国では、なおさらのこと。学校での成績が振るわないことは、否定的な自我の形成や将来展望閉塞をもたらし、当人を非行へと傾斜せしめるのに十分な要因になり得ます。いつの時代でもそうでしょうが、最近になって両者の関連が強まっているのではないか。こういう仮説を持って、データを分析してみることにいたしましょう。

「勉強ができない子は非行に走る」が30年間で加速している!

 内閣府の『非行原因に関する総合的研究調査』(2010年3月)では、一般少年と非行少年に、クラス内の成績がどの辺りかを自己評定させています。非行少年とは、刑法犯・特別法犯で検挙・補導された、12歳以上の犯罪少年・触法少年です。中学生の男子を取り出し、両群の成績分布の時系列変化を対比すると、図1のようになります。

 一般少年はこの30年間でさほど変わっていませんが、非行少年は成績不良者が明らかに増えてきています。「悪い方」の割合は1977年では47.9%でしたが、2009年では8割近くにも達しています。

 このように、両群の成績分布が乖離してきていることは、学業成績が振るわない者から非行少年が出やすくなっていることを示唆します。

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