2人に1人が大学へ進学する時代、学業不振者にはキツさが増している?

 一般少年と非行少年の数値を照らし合わせることで、この点を可視化してみましょう。2009年の一般少年の成績不良率は35.6%、非行少年のそれは79.0%です。よって、成績不良者からの非行者の出現確率は、79.0/35.6 ≒ 2.22 という数値で測られます。成績不良群から非行少年が出る確率は、期待値の2倍以上であると。

 3つの成績群についてこの数値を計算し、時代変化が分かるグラフにしてみました(図2)。非行少年の中での割合が、一般少年の中での割合の何倍かです。非行少年の輩出率ということにしましょう。ジェンダーの差もみるため、男女で分けています。

 成績良好群と普通群からの輩出率は減っていますが、不良群からの輩出率は上昇してきています。この傾向は、男子よりも女子で顕著です。

 ポストモダンとか価値観の多様化とか盛んに言われるようになり、学業成績に重きを置かない子どもが増えている、という指摘を何かの記事で読んだことがあります。しかし現実はグラフの通りで、成績は未だに子どもの自我を強く規定し、その良し悪しが非行に影響する経路があるようです。最近では、それが強まっているとすらいえます。

 調査の始点の1977年では、大学進学率(18歳人口ベース)は26.4%でしたが、終点の2009年では50.2%にまで高まっています。マーチン・トロウ流にいうと、高等教育のユニバーサル段階への突入です。大量進学体制がますます強まり、上級学校への非進学という選択肢は取りにくくなっています。こうした状況の中、成績如何が自尊心剥奪や将来展望不良を媒介にして非行につながる、という因果経路が太くなっているのではないか。

 ちなみに第15回の記事で見たように、小・中学生の自殺動機の首位は「学業不振」です。統計上は、いじめを苦にした自殺よりもこちらの方が多くなっています。